What are you doing here? part 1

表題の英語の意味はどういうものだろうか。中学で現在進行形を習いたての頃なら、「ここで何をしているのですか」でいいだろう。しかし、そう単純ではない場合もある。
最近読んだ英語の文法に関する本の中で、この文に言及したものがあった。本の題名は、「英語の仕組みと文法のからくり」(岩田彩志著 開拓社)。
当該部分を抜粋してみる。

まず(38)を見てください。どういう意味になるでしょう?
(38) What is this scratch doing on the table?
(Kay and Fillmore (1999))
「この引っかき傷はテーブルの上で何をしている?」??これではおかしいですね。引っかき傷が何かをすることはできません。実は「どうしてテーブルにこの引っかき傷があるんだ?」という意味になります。
 この構文は、主語に人間がきている場合もあり得ます。すると、中学一年生の英語としか思えなかった(39)も、実は「あなたはここで何をしているの?」で片付けてはいけないことが分かりますね。
(39) What are you doing here?
そう、「何でこんなところにいるんだ?」と訳すのが正しいのです。本来そこにいると思わなかった人に思いがけず会った場合に使われる表現ですね。
プロの翻訳家でもこのことを知らずに、ある洋画でこのセリフに、「ここで何をしているんだ?」というまちがった字幕を付けた人がいたようです。以前『翻訳の世界』という雑誌があったのですが、その中でそういう指摘がされているのを呼んだ記憶があります(私が大学生の頃の話ですが)。
また、この構文を使った次のようなジョークがあります。
(40) Diner: Waiter, what is this fly doing in my soop?
Waiter: Sir, I believe it's doing the backstroke.
客がウェイターに「どうしてこのハエが私のスープに中にいるんだ?」と苦情を言っています。それに対してウェイターが「背泳ぎをしていると思いますが」と答えています。たいていの人はこのジョークを見てなんとなく笑っているようです。しかし、実はこのジョークの本質は、客の使った構文をウェイターがわざと文字どおりの解釈(「このハエは私のスープの中で何をしているの?)で捉えて、切り返しているところにあります。だからこの構文が「どうして〜にいるのか?」という意味を表すことを知らないと、本当にはこのジョークが理解できていないのです。

なるほどそうだったのか。と目から鱗の話と思ってしまうかもしれないが、ことはそう単純ではない。