ボクは猫が嫌いだった2

飼っていたヒバリが猫に殺されて、猫全般を目の敵にしていた点は、エッセイの著者と同じだが、私の場合、具体的に、猫に対して何かをしたということはなかった。
その頃、家で飼っていた動物といえば、たくさんの小鳥や金魚だった。飼っているのは父で、私はそれらの世話を手伝っていた。
そして、その金魚や小鳥を狙って、頻繁に近所を徘徊する猫たちが家の庭にやってきた。
そうした猫たちに殺されたのは、先のヒバリだけではなかった。こうした状況に業を煮やした父が、あるとき、犬を飼うことを私に打診してきた。
小鳥や金魚だけでなく、犬を飼うとなれば、留守勝ちの父には十分な世話ができない。
そこで、私に犬の世話をするつもりがあるのなら、犬を購入する金は出すからと提案してきたのだ。
正直、犬はあまり好きではなかったが、大事に育てたヒバリを猫に殺され、隙あらば他の小鳥たちも襲おうとする猫に対抗するには、庭に番犬を置くのがよいと思い、父の提案に乗ることにした。
あまり大きい犬は手に余るので、小型で、番犬としても適任だということで、柴犬を今で言うブリーダーのところに出向いて、生後3ヶ月ほどの子犬を購入した。
そして、その子犬にタケルという名前をつけた。
日々の散歩、躾け、餌やり、全て私が行った。当然のことながら、タケルは私によく懐いた。庭に一匹犬がいる。それだけで、庭にやってくる猫を追い払うには、十分だった。