ボクは猫が嫌いだった5

ユキを拾ったのは秋だったと思う。ユキはどんどん大きく成長して行き、次の年の春には、柴犬のタケルより大きくなった。
拾ったころ、すでに生後3ヶ月を過ぎていただろうから、春のころには、生後9ヶ月か10か月にはなっていただろう。
避妊手術はしなかったので、このころにいわゆるさかりがついた。タケルも去勢していなかったので、放置すれば、ユキに子どもが出来ることが考えられたが、その時はその時で、子犬も一緒に育ててればよいと考え、妊娠を避けるための処置は取らなかった。
予想通り、ユキは妊娠して、夏の盛りに4匹の子犬が産まれた。しかし、ユキがまだ完全には成犬になっていないときの妊娠だったため、4匹のうちの一匹は未熟児で、生まれて程なくして死んでしまった。
また、母乳が十分には出ず、残りの3匹も哺乳瓶でミルクを与えないと、まともに成長しないと思われたので、ユキが子犬を産んだ縁側の床下に、毎日何度ももぐりこんでは、子犬たちに授乳した。
3匹の子犬たちは、順調に育ち、生後3ヶ月になった頃、2匹はよその家庭にもらってもらうことにした。
残った一匹のオスの子犬に、チャゲという名前をつけた。こうして、家で飼っている犬は3匹となった。
子犬たちが生まれる前から、ユキは庭で放し飼いの状態だった。子犬が産まれてからも、子犬たちの遊び相手として、ユキは庭を自由に歩きまわれるようにと、係留はしなかった。
チャゲはある程度大きくなった頃から、係留するようになったが、それまで庭を自由に動き回っていたユキは、係留を嫌がり、鎖で繋ぐと、放してもらうまで鳴き続けるので、ユキは鎖で繋ぐことをあきらめ、自由させておくことにした。