日本人の英作文2014-1-3

前回で、触れた受け手による情報の付け加えについては、英語関連のカテゴリーではなく、「最近思うこと」のカテゴリーで書いたことがある。
日本では、書き言葉であれ、話し言葉であれ、情報の送り手の正確な表現より、受け手の理解力が情報の伝達にとって大事とされる。
たとえば、次のような二つの文を考えてみる。
1. 今、主人の両親と同居しています。
2. 彼とアパートで同居しています。
1.の発言が、ごく普通の主婦と思われる人によってなされた場合、この人に関する具体的な情報がなくても、大人の日本人なら、同居しているのは、この人と夫の両親の三人だけではなく、少なくとも夫も同居していると思うのが普通だ。
日本語では、主語が省略される場合が、とても多く、省略された主語を補うのは聞き手の責任だ。
1.の文でも、主語が省略されているので、常識という尺度で、聞き手の方で、主語を補う。1.の文の場合だと、省略された主語は「私と主人は」が第一候補だろう。
だから、もし、何らかの事情で、この人と夫の両親の3人で暮らしている場合、発言者の方で「3人で」という言葉を付け加えないと、誤解を招いてしまう。
一方、2の文がまだ年若い女性による発言なら、アパートで暮らしているのは、二人だけと思うのが普通だ。
これも、常識という尺度を用いて、省略された主語は「私は」で、それ以外の人物の同居は想定しない。
しかし、上記の日本語を英語に訳すと、
1. I live with my husband's parents. またはI am living with my husband's parents.
2. I live in an apartment with my boyfriend. または I am living in an apartment with my boyfriend.
と、どちらも主語がIであり、1. の英語は3人暮らしで、2.の英語は2人暮らしと理解されるのが普通だ。
「二人だけで」をより明確にするため、"live only with"または"live just with"とすることは可能だ。
では、作文例1のように、"live alone with"の場合はどうかというと、これも英語としては可能な言い方だと思ったのだが、後日、ネット検索してみると、「二人だけで暮らす」という意味とはかなりニュアンスの違った使われ方をしていることが分かった。