オリエント急行殺人事件#3

ジョンベネ事件が事故だったにもかからず、誘拐事件を偽装したものだったとしたら、その偽装をしたのは誰か。
ドラマでは、母親が偽装を一人で実行したが、ジョンベネ事件では、母親以外にも父親、それから招待客までもが、事件発生当時に家にいた。
これだと、母親だけが偽装しようとしても出来ることではない。事件発生時に家にいた全員の口裏を合わせなければ、直ぐに偽装がばれてしまう。
オリエント急行殺人事件では、列車のひとつの箱に乗り合わせた乗客全員が共謀して、殺人を実行した。
ジョンベネ事件では、母親だけでなく、父親とその友人、ひょっとすると、事件を通報を受けた警察官の一部も加えた複数の人間が、実際にはありもしなかった誘拐事件の偽装に加わったのかもしれない。
誘拐事件が偽装だったとして、なぜそうまでして偽装しなければならないのか。
これはひとえに、事件がいわゆるセレブ家族に起こったことだからだろう。日本と同じく、アメリカでもセレブ家族は大衆一般の好奇の目にさらされる。
その家族に起きた悲劇は、それがたとえ不幸な事故であっても、いつまでも大衆の口の端に上(のぼ)ることになるだろう。
そうした世間の好奇の目から、長男を逃れさせるためだったと考えれば一応の納得はいく。
この事件をねたにしたと思われる刑事ドラマは、先に挙げたものだけではない。
私が見たものでは、それ以外にも2つ、どちらも刑事物のドラマがそれぞれ、この事件に対する別の解釈に基づいてドラマを作っている。
それだけ、この事件はアメリカ人の心に大きなインパクトを与えたということだろう。
真相は本当のところどうだったのか。関係者の中には、故人になってしまった人もいる。
まだ生きている関係者全員が、口をつぐんだままであれば、この事件は出口のない迷宮に迷い込んだままになるだろう。