検索力#1

なんにでも最後に「力」をつけて表すのが昨今の風潮のようで、これは赤瀬川源平の「老人力」に端を発するようだ。
続いて現れたのが、「女子力」なる言葉。いい年をした女性が「女子」でもあるまいにと思ったが、この言葉のほうが「老人力」よりも「生命力」が強かったようで、前者が今も現役であるのに対し、後者は早々とこの世から消え去った。当然といえば当然か。
どちらにせよ、今風のはやり言葉は決して口にしない私としては表題のような言葉は使いたくないのだが、他に適切な言い方を思いつかないので、この表題で行く。
「検索力」という言葉で表したいことは、おおよそ想像つくと思うが、要するにネットを使って物事を調べる際の、情報の収集力のことを言っている。
このネット検索というやつ、私の場合、一日のうちの数時間がこれに費やされる。
私は小さいころから本を読むのが好きで、幼稚園のお遊戯の時間にも、遊戯室の隅に置かれた大きな積み木の陰に隠れて本を読んでいたぐらいの本好き。
少し長じてからはもっぱら図鑑、百科事典、漢和辞典、故事物語が愛読書となった。百科事典はまさしく知識の宝庫。
私の今のほとんどの知識は上記の図鑑、百科事典などから得た知識で構成されている。学校で習ったことはほとんど全部忘れた。というより、先生の授業は教育のどの段階でも、ほとんど聞いていなかったから、忘れるという以前の問題だ。
こうした人間にとって、ネットの世界はまさにパラダイスだ。くめども尽きぬ知識の宝庫とはまさにネットのことで、どんな百科事典、立派な図書館の膨大な所蔵もネットの総合力、迅速性には遠く及ばない。
その一方で、「諸刃の剣」という言葉があるが、これがネット検索に、もろに当てはまる。
うまく使えば、これほど強力な情報源はないといえるが、使い方を間違えると、間違った情報に振り回される結果となる。
情報量や迅速性の一方で、ネットの負の部分も、これまたきわめて強力なのだ。
最近、趣味の多肉植物のことで、ネット検索に長時間を費やした。
ある多肉植物の名称、その由来について、横文字で表されたその植物の名前で検索すると、日本語のサイトで出てくる画像と、英語のサイトで出てくる画像のものが似ても似つかないのだ。
一体どういうことかというと、日本人はネットを使うといっても、使用言語は日本語のみ。当然、検索するのは日本語のサイトばかりになるから、ある間違った情報が日本語のサイトを通じて発信されると、その情報が、瞬く間に、日本人のネット使用者の間に蔓延してしまう。
とりわけ趣味の世界では、どの趣味であれ、同じ趣味を持つ人たちの間で、尊敬されたり、一目置かれる人間が存在する。
そうしたいわゆる「ナンチャラのカリスマ」だの「ナンチャラ名人」なる人物が発した情報の場合、間違いのない情報として、同じ趣味を共有する人間の間に広まってしまうということのようだ。
多肉植物の場合、間違った情報の発信源は、有名通販ショップということが多いように思う。