絶滅種#2

持っていないものの次は、クレジットカード。サラリーマンになりたての頃、自分の銀行口座を持ったのを機会にクレジットカードを作った。
しかし、その後、勤めていた会社を辞めた後、使う機会もないまま休眠カードになり、その後自然消滅した。
定期的に口座に振り込まれる給与が無くなったら、クレジットカードは不要だ。
続いて、タバコに火をつけるための道具。ライターやマッチも持ち歩くことが無い。喫煙の習慣が無いから当たり前。
私の年代だと、大学生になるぐらいの年頃に、ほとんどの男はタバコを吸い始めた。タバコを吸うのが一種の通過儀礼となっていて、仲間意識も手伝ってほぼ全員がタバコを吸った。
大学生の頃、流行ったのがマージャン。雀荘なんてところは、紫煙もくもくの中で、チーだのポンだのの声が飛び交う場所だった。
雀荘でなくても男子学生がたむろする場所は同時に紫煙渦巻く場所で、それが嫌いな私はそういう場所には決して寄り付かなかった。したがって、大学時代、ほとんど友達はできなかった。
一年ほど前のこと、里子訪問で、里親さんと河川敷駐車場で待ち合わせた折のこと。
一年ぶりに里子に出したワンコと久しぶりの対面を果たしていると、そこに60代と思われる男性が近づいてきた。
「タバコ一本もらえるかな。」と聞かれたものの、当方、喫煙の習慣は無いのであげられない。
「申し訳ない。タバコ吸わないもので。Kさんはお持ちですか。」と里親さんに聞いてみたが、何年か前に禁煙したということで、やはり持っていない。
いかにも不服そうな顔で男性は立ち去った。
その男性はたぶん、家では喫煙が自由にできなかったのだろう。河川敷を散歩いているうち、どうしてもタバコが吸いたくなり、同じ年代の男ならきっとタバコを持っているに違いないと思って近づいたのかもしれない。
外見から期待できるものを私が持っていなかったことで、またも相手の期待を裏切ってしまった。
最近の年代別喫煙率を調べてみた。すると、私の年代の喫煙率は20%を切っている。かつては大多数だった喫煙者はいまや少数派となってしまっているのには少々驚いた。