日本人の英作文2015-6

今回の課題箇所と訳文の例はつぎのとおり。

ひなは、生きていました。けがもしていません。ひろみせんせいは、ひなを巣にもどしてあげまた。ところが、きょうだいにたちに押しやられ、すぐにまた落とされてしまったのです。
訳文1
The baby bird was alive. It didn't hurt itself neither. Mis Hiromi put it back into the nest. But it was pushed aside and fallen by its brothers and sisters.
訳文2
The young was alive. It was not injured, either. Hiromi-sensei put the swallow back in the nest. It was, however, pushed to the corner by its siblings and fell out of the nest again.
訳文3
The baby swallow was alive. He didn't even injure. Hiromi Sensei put him back to the nest. But he was pushed away his brothers and he fell off the nest again right away.

「怪我もしていません」の部分。訳文1は、"not〜neither"とnotとneitherという否定語を二重に使っている。ここはは"not〜either"の形の訳文2のほうがいいのだが、そもそもその前の文が肯定文なので、どちらにしても2文目に"neither"または"not〜either"が使えないように思う。
訳文3のように、"not〜even"の形が良いと思う。ただし、訳文3のように、"injure"を平叙文で使うと「誰かを傷つける」の意味になってしまう。
日本人は他動詞と自動詞の区別を十分に理解していない。主語や目的語の省略が当たり前の日本語では、その傾向がますます強まる。
他動詞と自動の区別が曖昧な日本人は、英語の他動詞と自動詞の区別がはっきり理解できていないことが多い。
ここでも日本語の「怪我をする」は自動詞だが,それに同じ自動詞で対応する英語はない。
他動詞injureを使って「怪我をする」を表すには受動態にしなければならない。
"hurt"の場合は、訳文1のように、再帰代名詞を使う方法があるが,この言い方は現在、廃れていると思う。したがって、hurtを使う場合でも受動態が普通。
つぎの文の「ひなを」を,訳文2は"the swallow"、訳文3は"him"を使って表している。
一度出てきたものを英語では代名詞に置き換えるのが普通。
ときどき、それが何かを示すため,"the+別の単語"が使われるが、訳文2のように、その直ぐ前に"the young"と表現したものを,つぎの文でまた普通名詞で表すというのは,通常行われない。
また、訳文3の"him"はオスメスの区別がない「ひな」の訳語として正しさは50パーセント。無性の単語itを使えば済むところ。
なぜ訳文1のように、"it"にしなかったのかと聞いたところ、「"it"は愛想がなくてなんだか、感じが出ないから」という返事。
原則、代名詞を使わない日本語で育つと,こういう感覚になるようだ。
第3文目の「きょうだいたちに押しやられて」の部分の、「きょうだいたち」も"brothers"とは限らない。
最近の日本語では、正確には「姉妹」であるべきところまで,「きょうだい」が使われるようだ。
漢字にすればそのおかしさは明白だが、会話だと違和感が少ない所為で、平気で「女きょうだい」などというわけの分からない使い方までされている。
この原文の「きょうだい」も、オスだけを指す意味で使われていないと考えるのが自然。
その点を考慮して訳文1は"brothers and sisters"とし、訳文2は"siblings"という、無性の単語使ったのだろう。
しかし、他のヒナの性別は,分からないのだから"brothers and sisters"で正しいかどうかは分からない。
また、"siblings"を人間以外の動物や鳥に用いることができるかも不明。
ここは"the other chicks"を使えば済む。
それから、訳文1はすでに述べた「他動詞と自動詞の混同」を"fall"という単語で犯している。
"fall"は「木を切り倒す」という以外に他動詞用法はなく,「落ちる、倒れる」という意味の自動詞で使う。
すると、その意味の受動態はないわけで、受動態にするなら、他動詞"drop"を使うべきところ。
しかし、"drop"には意図して投げ落とす感じがする。他のヒナがそこまで意図しているとは考えにくく、巣の周辺に押し出された結果,落下すると考えるほうが自然。
「落とされる」の「される」は日本語独特の被害,受難を表す表現。英語の受動態にはそのようなニュアンスはない。
つまり、「〜される」をそのまま受動態にしても、被害を表すことはできないし、そもそも受動態にする必要もない。

訳例
It was still alive. It wasn't even injured. Hiromi-sensei put it back to the nest. But it was soon pushed away by the other chicks and fell off from there again.