知性が大事40

私のオーストラリアでの滞在は3月末まで。そのときが間近に迫った頃だった。
私をカタンニン高校に招いてくれた、校長が転勤することになり新しい校長がやって来た。
その後だったと思うが、学校の行事の一つでクイズナイトというのがあった。
これは、カタンニン高校の生徒の父兄や近所の人を招いて,チーム戦でクイズをやろうというものだった。
カタンニン高校の先生たちが教科別のチームを作り,参加父兄は生徒が同じクラス同士でチームを作る。近隣の人たちはその人たち同士でチームになる。
一チームのメンバーは、5人ほど。そしてこの夜の参加チームは、全部で20を超えていたと思う。
日本でクイズをするときは,早押しボタンを使ってのチーム戦になるところだが、オーストラリアには、そんなものは売っていない。
第一、20も参加チームがあったのでは、それに対応する早押しボタンは日本にもないのではなかろうか。
ジャンル別に問題が10個ずつぐらい、ジャンルは、科学、歴史、地理など、学校に教科にそったものと、一般常識など、あわせて5から6ぐらい。
教科別になっているのは,高校の先生が教科別のチームを作っているので,公平を保つためだろう。
ジャンル別に問題用紙がチームごとのテーブルに配られる。そして、解答用紙にチームのメンバー全員が答えを考えて、正しいと思う答えを書いていく。
提出された解答用紙を採点係りの人が何人もいて、人海戦術で採点していくというもの。
このクイズナイトは毎年の恒例行事として定着しているようだった。
クイズは知性の高さと言うより,知識の豊富さが勝敗を決する。知識の豊富なことも欧米では、教養の高さを表すものとして高く評価するのかもしれない。
このクイズナイトに私も参加することになった。そのときに滞在していた家族の母親が日本で言えば、学研のような教育教材を親に売る仕事をしていて,自分の知識の豊富さを示す機会でもあったようで,この母親に連れられて会場にやって来たのだった。
問題はどんなものだったか、細かいところまでは覚えていない。
しかし、そのときから20年以上がたった今でも覚えているものがいくつかある。
科学関連の問題で、「磁石にくっつく金属元素をすべてあげよ」というのがあった。
鉄がそのひとつであることは誰でも知っている。もうひとつはニッケル。これも常識。もうひとつがコバルト。これは知らない人が多いのでないだろうか。
私が入ったチームのメンバーも同様で,3番目のコバルトのことは,私以外誰も知らなかった。
そんなことは知らないメンバーが多かったので、私の意見は却下されそうになったが,間違いのないことだと強く主張し、解答用紙にはコバルトが書き加えられた。
他の問題で記憶に残っているのは,オーストラリアで見かけることのある企業のトレードマークが、どの企業のものかを答える問題だった。
トレードマークの数、30ほどもあり、全部の企業名を答えるのは至難だった。
その中に、ホンダとスズキのエンブレムも混じっていた。
さすがに、当時は日本車がオーストラリアの市場に進出していた頃で、30の企業の中に、2社の日本企業が混じっていたのだ。
これも私にとっては企業名を答えるのは簡単なことだったが,他のメンバーは日本企業の名前は知らなかった。知っていても、エンブレムと結びつけることはできなかったようだ。
解答時間は結構長く,学校でやるテストよろしく,1時間ぐらいあったと思う。
解答時間が終わると採点係の人が解答用紙を回収にやって来た。
さて、回収が終わって,採点が始まった。採点の結果を待つ時間の長いこと。待っている間に、それぞれのチームは仲間とおしゃべり。会場全体がざわざわと騒がしかった。