知性が大事41

クイズの解答の採点結果が発表されるときが来た。まずは部門賞。ジャンル別にそれぞれのトップチームが発表される。
それまでざわついていた会場がシーンと静まり返った。
まずは科学部門賞。優勝チームとして私たちのチーム名が読み上げられた。
チームのメンバー全員が喜びに湧いた。
続いて、地理部門。再び私たちのチーム名のアナウンス。周りからどよめきの声が上がった。
さらに歴史部門。またまた私たちのチームの名前が。今度はどよめきというか、えーっと言うような驚きの声。
さらに、もうひとつの部門賞、例の企業名を答える一般常識部門。これも私たちのチームが優勝。このときの周りの反応はもう驚きを通り越し、「えーっ、またかよ」という声がどこからともなく聞こえてきた。
最後の部門賞こそ逃がしたものの、五つのジャンルのうち四つのジャンルを我がチームが獲得したのだ。
そして最後が、栄えある総合優勝チームの発表。しかし、どのチームが優勝するかは、誰も目にも明らかだった。
優勝チーム名の発表の前にドラムロールが会場に鳴り響いたが,どこかのテーブルから,「もうみんな優勝チームがどこか知ってるから,発表なんかしなくていいよ」というヤケクソじみた声が飛んだ。
そしてみんなの予測どおり、総合優勝は私たちのチームだった。
並みいる先生たちのグループをすべてなぎ倒して,ぶっちぎりの準完全優勝
チームメンバーの一人の女性はこの事態に興奮しまくって,「ねえ,ねえ,これってほんとのこと?うそじゃないわよね」とはしゃぎまわっていた。
それぞれの部門賞と総合優勝に,賞品が用意されていて,私たちチームメンバーがこれを受け取った。
クイズナイトの次の日、ホームステイ先の家に近所からの訪問者があった。ホームステイマザーとその人の会話を聞くともなしに聞いていると、クイズナイトのことがもう町中に知れ渡っているとのこと。これが確か日曜日のことだったと思う。
そして次の週が始まり、私が登校し、先生方に朝の挨拶をすると、これまで一度も話す機会のなかった先生たちも笑顔で、挨拶を返してくれた。
なんだか、とても反応がよくなっていたのだ。これはひょっとしてクイズナイトでの優勝が影響したのか。そう考えるしかなかった。
私はいわばクイズに飛び入りで参加した。そして参加したチームが圧倒的勝利を収めたことで、その優勝に貢献したに違いない私の株が上がったのだろう。
実際のところ、私がクイズで貢献できたのはせいぜい5,6問に過ぎない。
チームが優勝できたのは、メンバーの組み合わせがとても良かったことだ。
私たちのチームのメンバーは、地元の人間は二人だけで、一人はイギリスのウェールズから比較的最近,オーストラリアに移ってきた女性。
私のホームステイマザーはインド人でカナダに親戚がいる人。そして私が日本人。年齢も性別も、出身地も様々ないわば,インターナショナルチームだった。
この組み合わせがクイズの問題の解答に非常に有利に働いたのだ。
そんな事情を回りは知らないから、私の実力を過大評価してしまったのだと思う。
まあ、私にとってはうれしい誤解ではあった。