知性が大事43

テッドのうちに滞在中の出来事でよく覚えているのは、滞在二日目だったか夕食の後の一家の団欒のときに、ジョージがちょっとしたゲームをやろうといってきたこと。
何をするのかと思うと、一ドル紙幣を自分に渡せという。ちょっと躊躇しているとちゃんと返すから心配するなといい、50セントコイン2枚に両替して返却。
今度は、返ってきた50セント硬貨2枚にさらに1ドル札を付け加えて、2ドルにして渡せとか何とか。
具体的な手口は忘れたが、この両替と金額の増額を繰り返す中で、私の金の一部を騙し取るというトリックだった。
しかし、手順の途中で返却されていない額があるにもかかわらず、次の手順に進もうとしたので、"No."と強く言って手順を中断した。
するとジョージはとても残念そうな顔をして,父親に向かって,「どこかまちがえたかな」と聞いた。
するとデッドは、「いや,ちゃんとできてたよ。でも彼はこのトリックに引っかかるほど馬鹿じゃなかったてことさ」と答えた。
おいおい、こちらの知能程度を試したのか。
そう父親に言われても、ジョージはまだ悔しそうな表情をしていた。
おそらく、彼自身が以前に父親にこのトリックを仕掛けられて,まんまと金を騙し取られたことがあるのではないだろうか。
そのときのトリックを私に仕掛けてくるというのはどういうことなんだ。
父親も父親で、目の前で息子が金を騙し取るトリックを仕掛けているというのに,ニコニコ笑ってみていた。日本じゃ考えられないことだ。
騙し取るといっても数ドルのことなので,ちょっとしたいたずらということでこちらもそれで済ませた。
すると今度は学校でもらった数学の課題について、尋ねたいことがあるというのだ。
数学といったって、相手は工学部の大学生だ。文科系出身の私が判るようなことではないと思って、父親に聞いたらどうかと返事をした。
父親のテッドもパース大の工学部出身だと知っていたからだ。
するとテッドは、そりゃ昔は数学の問題もやったけれど,もうすっかり忘れた。ジョージは自分で課題を克服しなければとの返事。
じゃまあ、その数学の問題というのを持ってきてみろと私が言うと、ジョージは、一枚の紙を持ってきた。