日本人の英作文2015-12

「つばめのつんちゃん」のお話も今回を含めて、後二回。
いつもどおり課題箇所と作文例は次のとおり。

課題文
「やった!とんだ!つんちゃんがいちばんだ!」
サリーちゃんがとびはねました。巣から落とされたつんちゃんが、きょうだいの中でいちばん先にとべたのです。
すいすいすーいと、かっこよくとんでいきます。
訳文1
"Good job! Tun-chan flew first."
Sari-chan jumped. Tun-chan who was dropped from a nest flew at the very first among the brothers. It flew gracefully.
訳文2
"It made it! It flew up! Tun-chan flew up the first!"
Sally jumped and down. Tun-chan that has been dropped from the nest could fly earlier than any other siblings. It flew away smoothly and looked nice.

「つんちゃんがいちばんだ」は、何がいちばんなのかは、つぎの文にあるように、きょうだいの中で、一番先に飛んだのがつんちゃんだったということ。
訳文1のように、"Tun-chan flew first."だと、つんちゃんがしたことのうち、最初にしたのが飛ぶことだったの意味になる。
訳文2の"flew the first"は、firstの前にtheがあり、firstが形容詞として使われている。すると、その後に名詞が来ないとおかしい。
ここは、"Tun-chan was the first chick to fly among the brood."とするのが正しいと思う。
このシリーズで前にも指摘したが、訳文1のように、一時に生まれた雛は、"brood"で表現するのが普通。
人間の場合にように、"brothers and sisters"やsiblingsのような表現はしないようだ。
実際、検索でも鳥の場合に,このような表現を使った例は見つけることができなかった。
「巣から落とされたつんちゃん」の部分をいずれの訳文も、制限用法の関係代名詞を使って表現しているが、関係代名詞の先行詞が固有名詞のような、制限をつけなくても特定できるものの場合、関係代名詞の制限用法は用いられない。
制限用法の制限の意味を理解していない証拠。
つぎの文の「きょうだいの中でいちばん先にとべたのです」は、やはり比較級あるいは最上級を使った表現がいいだろう。
問題は、訳文2の中で使われたcould。実際に行われた行為をcouldを使って表すのは誤り。
以前にも述べたが、日本語でも「できる」は、主語がある行為をすることに関して、
1. その能力がある 2. その行為が可能な状況にある 3. その行為を許可する立場の
人、あるいは機関の許可を得ている
ということを意味する。
これは英語のcanでも、1〜3に対応する用法があり、「できる」を"can"を使って表現してもなんら問題ない。
ところが、日本語の「できた」は,「できる」の場合の日本語の用法の1から3をそのまま過去にシフトしたものだけではなく,
4. 困難と思われる行為が、工夫や努力によって達成された
5. これまでにその事をした経験がなく,困難が予想されたが意外にもできた
6. 何かが完成した,作業などが完了した。
という意味が加わる。
一方、英語の"could"は、現在形のときの1〜3の用法を、そのまま過去にシフトした意味と、さらに仮定法の意味が付け加わるが、日本語の4〜6の「できた」の意味に対応する用法はない。
したがって、課題箇所の「とべた」を"could"を使って現すのは間違いになる。
訳例
"You did it, Tun-chan. You are the first chick to fly among the brood."
Sally-chan was jumping around out of joy.
Yes, Tun-chan, who fell from the nest, flied earlier than any other chick. It went flying away swiftly and stylishly.