日本人の英作文2016-2

さて、新しい英作文の課題の「別れ話は突然に」、実際の英作文例を見てみる。
課題箇所と訳文例は次のとおり。

課題箇所
地下鉄ホームでの出来事だった。亜美がこう囁いたのだ。
「あたし、あなたについていけない。何か嫌いになりそうな予感がするんだ」
ちょうどその時、『一番線に電車がまいります』というアナウンスが流れたが,驚いた亮平には、まったく聞こえなかった。
訳文1
This is about what happened at a subway platform. Ami whispered to Ryohei, "I can't come with you anymore. I have a feeling that I would come to dislike you."
Just then, there was an announcement saying, "A train is coming Track No.1."
Ryohei, however, was upset with what Ami had said and didn't hear the announcement at all.
訳文2
It was an occurrence at subway platform. Ami whispered, "I have no confidence I'll follow you. I have premonition I will come to hate you. At that instant, an announcement informed us that a train was coming soon at the platform, but Ryohei was so surprised that he didn't hear it.

日本文のほうの「地下鉄ホームでの出来事だった」には主語がない。主語をつけるとしたら「文頭に「それは」だろう。
訳文2は、その考え方に基づいたものだと思う。
訳文1は、それまでに言及のないものを代名詞の"it"で文をはじめることができないと考え、別の表現にしたものと思える。"this"はこれから言及することでも使えるからだ。
複文の場合に,従属節が先行し,その中に主節の中で言及されるものを代名詞で表現することはある。
すると、やはり訳文2のように、単文の場合に"It"で始めるのは駄目ということになりそうだ。
小説などでは、初めて言及するものに定冠詞をつけて、あとからその内容の描写を行うという手法が用いられることがある。
すると、ここの場合、"The thing happened at a subway platform"でいけそうだが、実例を検索しても見つけることはできなかった。
訳文1が最も無難ということになりそうだ。
次の文の「あなたについていけない」を訳文1は"come with"で、訳文2は"follow"を使って表現した。
この場合の「ついていけない」は、聞き手(亮平)の物理的な移動に追従できなくなることを意味しているのではなく,彼の考え方や,感じ方に我慢ならなくなっていることを意味している。
すると、訳文1の"come with"には「ついて行く」という移動の意味が主なので、こういう場合には使えないことになる。
一方の"follow"には、考え方などを理解するという意味があるので,これならいけるだろう。
しかし、ここはもっと端的に、"put up with"などのような直接的表現のほうが英語らしい。亮平は鈍感な人間のようなのでなおさらだ。
「嫌いになりそうなよ予感がする」は、"premonition"というような単語を使わなくても"be going to"という、よくある表現で表現できる。
この表現は、学校では「〜するつもり」という意味でしか習わないためか,「この状況のままでは〜という結果になる」という意味があることを知らない人がほとんどだ。
訳例
This is about what happened at a subway platform. Ami whispered, "I can't put up with you anymore. I think I'm going to hate you."
Just then, there came an announcement saying, "The train is coming into Track No. 1."
It, however, didn't reached Ryohei's ears because he was so upset about what Ami had said to him.