人工知能の限界3

コンピュータの翻訳ソフトがたいしたことがないのは、そもそも、そういうソフトを開発しているプログラマーが翻訳の何たるかを少しも理解していないからだ。
さらにいえば、プログラマーにかきらず、人間が言語とは何か、言語を使って物事を理解するとはどういうことかという深遠な問題をなにも理解していないからだと思う。
深遠なる問題はさておいて、翻訳のことだけに限ってみても、単にある言語での言葉を、別の言語に置き換えるだけで、翻訳だと思っているのならそれは違う。
言葉を理解し、考える能力のある人間でも,翻訳というのは簡単にはいかないものだ。
単語の知識だけでなく、文の構造を解き明かす文法を武器に加えても、まだ十分ではない。
学校での英語教育は、この「単語知識+文法解析」で英語を理解するように教える。
いわゆる英文和訳はまさに,この手法で行う。
これで、翻訳になるのなら、入試の英語で高得点を取れる生徒は,全員,優れた翻訳家といえるが,そうはならない。
しかし、翻訳ソフトを開発しているプログラマーは,この手法のプログラム化が成功すれば、翻訳ソフトはうまく行くと考えているのではないだろうか。
先に例を出した、グーグルの翻訳サービスに用いられているソフトはこの文法解析すら,うまくプログラムされていないようで、翻訳した後の文は、まったく意味を成していない。
文法のプログラム化が成功したとしても、まだそれでは十分ではないのに、いまだ、データベースに大量のデータを記憶させる能力しかないコンピュータや、その能力を応用するソフトでは,いつまでたってもまともな翻訳ソフトは完成しないだろう。
上記の内容も抽象的なので,またまた具体的な例を出してみよう。
今度は英語から日本語への翻訳の例。
英文和訳のことにも言及したので、典型的英文和訳による日本語も示してみよう。

英語原文
You can use short sentences unless, as is often true, a shingle long sentence will show the relationship of the ideas more cleanly.
英文和訳例
しばしば、本当であるが、ひとつの長い文が,複数のアイデアの関連性をより明らかにしないかぎりは,複数の短文を使うことが出来る。
グーグル翻訳サービスによる翻訳
多くの場合そうであるように、シングル長文がより明確にアイデアの関係が表示されます、しない限り、あなたは短い文章を使用することができます。
翻訳例
一文にした方が文中の思考のつながりがよく分かることも,確かに多い。だが、そうではない限り、長くなるようなら文を切ればよい。

グーグル翻訳サービスの翻訳は、日本語から英語への変換に比べて,ずっとまともな文になっている。典型的な和訳にかなり近いから,文法的なことも一部はプログラム化されているのだろう。しかし、挿入部分の処理がまだ出来ないようだ。
そして、翻訳例との差は歴然としている。
翻訳例は、「翻訳の原点」という本から引用したもの。翻訳ソフトが翻訳例に示したような翻訳が出来るのは何時のことだろう。
ちなみに、私は英語の文章を読むときに、頭の中で翻訳してはいない。
書いてある英語の語順のまま理解している。そのときの理解をあえて日本語にすると次に様なことになる。

語順どおりの理解の仕方(私流)
短い文に分けるという手もある。しかし、普通は長い一文のほうが関連する考え方がよく分かるのだ。

ところで、3月22日の火曜日、読売新聞の朝刊に「AI小説 創造のめばえ」と題した記事が一面に出ていた。
コンピュータに小説を書かせることに成功したという記事だ。このことに関して、次回のブログ記事で取り上げることにする。