日本人の英文解釈2

前回記事掲載の課題文を再掲する。

P2
Avonlea occupied a little triangular peninsula jutting out into the Gulf of St. Lawrence, with water on two sides of it, anybody who went out of it or into it had to pass over that hill road and so run the unseen gauntlet of Mrs. Rachel's all-seeing eye.
訳文例: アボンリーに来るものと去るものすべて、この丘の道を通らねばならないので、いやでも並外れた眼力を持つレイチェル夫人の監視の目をくぐりぬけることはできない。

「アボンリー」という場所は実際にカナダに存在する町の名前なのだが、小説の舞台となった場所ではなく、「赤毛のアン」に出てくる町の名前にちなんで名づけられたもので、小説の方が先。
小説の舞台になったのは、同じカナダにあるPrince Edward Island。この島の北東部には海に突き出た部分があり、英文の内容に一致する。
もっとも、グーグルアースで検索してみても、島のこの部分に大きな人口を抱えた町、あるいは村は見当たらず、Avonleaはあくまで、小説の中の架空の場所のようだ。
jutting out以下、St. Lawrenceのまでの部分はpeninsulaを後方から修飾している。
次のwithからitまでは付帯状況、つまり、アボンリーの地理的条件を表している。
町はセントローレンス湾に突き出た半島にあるため、町に入るにしても、出るにしても、丘の道を通るしかない。
さて、勉強会で宿題としたのは、その次からの部分。
この部分には、"run the gauntlet of..."というイディオムが含まれている。
gauntletに関しては、"throw down the gauntlet"というイディオムがあるが、そのイディオムとはgauntletの意味が全く違う。
全く違うものが同じ単語であるのには何か語源的なことがあるのかもしれないが、本稿の目的ではないので省略。
こちらは「鞭打ちの刑を受ける」という意味だが、そのままの訳では、文脈に合わないので、それなりの工夫が必要。
ちなみに、クリント・イーストウッド主演の映画に、「ガントレット」というのがあった。
大型バスに乗った主人公が警官隊から一斉射撃を受けるシーンが映画の最後の方に出てくる。
何十人もの警官隊から一斉射撃されて、それでも、主人公には銃弾の一発すら、かすりもしないというのはハリウッド映画の決まり事。
それはともかく、この一斉射撃がこの映画の場合のgauntletというわけだ。
赤毛のアン」には何人もの翻訳家による本が出版されている。
翻訳例として、掛川恭子版を参考例として挙げてみる。
翻訳例: アボンリーの村は、セントローレンス湾に突き出た小さな三角形の岬にあって、両側を海に囲まれている。村にやってくる人も、村から出ていく人も、この丘越えの街道を通らなくてはならないから、自分では気が付かないうちに、ミセス・リンドの何一つ見逃さない監視の目にさらされる羽目になるのだ。