日本人の英文法26

例文4を日本語に訳すと、どうなるだろうか。「私は今朝、タバコを2本吸った」では、この文の意味を正しく伝えていない。
I smoked two cigarettes this morning. の訳としてならそれでいいが、現在完了形の例文4の訳としては、情報がかなり欠落してしまう。
「私は、タバコを2本吸ったところだ」だと、this morningというのが問題になる。
I've just smoked two cigarettes. の訳としてならいいのだが。
正しい訳はどうなるかは後にして、この文の意味を考えてみる。
まず、この文が成り立つのは、まだ午前中の時間に限られる。朝を起きて、活動を始めて、まだ午前中の現在に至る時間の間に、累計として、2本のタバコを吸ったということをこの文は伝えている。
そして、もう一つ。時間がまだ午前中だから、この午前中の時間内に、さらにタバコを吸う可能性もこの文は意味している。
さて、この例文4が、先の記事からの抜粋a)〜d)の意味を理解する上でのヒントになるという点だが、構造が簡単なb)の文の意味に絞って考えてみる。
"in the past"という過去を表す副詞句があるが、現在完了形を使っているので、これは現在を含んでいる。また、"past"の開始時間は、地球が形成されたときだ。
つまり、この文の意味は、地球が形成されたときから、現在に至る長い時間の中で、これまでに、巨大な小惑星が何度も、地球に衝突し、生物を絶滅させてきたということだ。
例文4とb)の共通点はなんだろうか。
それは、どちらも、過去のある時点から、その文が発話された、あるいは書かれた時点までの時間の中で、同じ性質の事象が繰り返し起こり、その事象がその先もまた起こる可能性も示唆している点だ。
つまり、一連の事象の現在時点までに限った、中間累計という点で、二つの文は共通している。
このように、現在完了形の文は、対象とする時間が、どんなに過去にさかのぼる場合でも、それまでに起こった複数の事象を、現在に至るまでの一連の事象として捉えた場合、使用が可能だということだ。
例文4は対象にする時間が大変短く、逆にa)は、それこそ天文学的長時間を対象としていて、まさに両極端ではあるが、事象の捉え方は同じといえる。
こうしてみると、現在完了形のうち、経験とは、主語が人間で、動詞が経験を表すのにふさわしいもので、対象の時間が主語の人間が生まれてから、今日に至るまでという、条件を備えている特別な場合だが、過去から現在に至る、一連の事象を扱う点は、例文4やa)と共通していることが分かる。
実際、経験を表す現在完了の文、"I have been to Europe twice." という文は、
生まれてから、今日までに2回、ヨーロッパに行ったことがある意味だが、人生がまだ終わっていないから、この回数は、今後増える可能性もこの文の意味にはある。
a)やb)の文を書いた人物は、これまでに何度も起こった小惑星の地球衝突を、地球が形成されてから、今日に至るまでの一連の事象として捉えているから、現在完了形を使ったのだ。
そして、この文は、地球がその寿命を終えるまでの長い時間の中で、同じことが起こる可能性も示唆している。