歌詞という難物2

さて、前回引用したイーグルスのDesperadoの歌詞、それを題材に訳詩した例を引用してみる

訳詞 その1
デスペラード なぜ目を覚まさないんだい?
ずいぶん長い間フェンスに座っているね
意地っ張りだな!
お前にはお前なりの理由があると思うけど
お前のやっていることが
お前を傷つけてしまうことだってあるんだ

ダイヤのクイーンなんて引いちゃだめだ
お前には荷が重すぎる
ハートのクイーンが一番だってことは
知っているんだろ
テーブルに並んでいるものが
僕には一番に見えるけど
お前の欲しがるものは
手に入らないカードばかりだ

デスペラード お前はもう若くはないんだ
痛みや物足りなさを味わえば
家に戻るしかない
自由、自由と人は言うけれど
おまえは一人ぼっちで
世界を歩いている囚人なのさ

冬になると足は冷たくならないかい?
空には光もささないし 雪も落ちてこない
だから昼と夜を区別することだって
難しいのさ
おまけに感情の高鳴りや
落ち込みさえもなくなっている
なぁ、それっておかしなことだろう

デスペラード そろそろ目を覚ましたらどうだい?
フェンスから降りてゲートをあけなよ
雨が降ってくるかもしれないけど
お前の上にはちゃんと虹がかかっている
誰かに愛してもらおう   
まだ間に合ううちに・・・

引用した上記の訳詞から、Desperadoという人物像をどのように考えたらいいのだろうか。
通名詞の"desperado"は、英和辞典によると、「無法者」という訳がつけてある。イーグルスのアルバムで、同曲を収録してあるものには、「ならず者」という日本語タイトルがつけてあるそうだ。
その「ならず者」がフェンスの上に、長い間ずっと座っていたって、一体フェンスの上で何やってたんだろう。その次に「意地っ張りだな」なんて訳をつけているが、すねた子供じゃあるまいし。
ならず者に対してフェンスから降りてこいって、そういうあんたは何者?
第二節では、「ダイヤのクィーンなんて引いちゃだめだ」って、フェンスから降りてきて、トランプで七並べかババ抜きでも始めたのだろうか。
ってことは、やっぱり「ならず者」はゲームに入れてもらえず、すねてたってことなのか。
「ならず者」なんてタイトルとはぜんぜん似つかわしくない子供っぽい行動だ。
この後の訳詩をざっと見ても、このDesperadoがどんな人物なのか、さっぱり分からない。
その後の訳詞に、「お前はもう若くない」という部分があるが、若くもない人間をつかまえて、「誰かに愛してもらおうまだ間に合ううちに」などといっている場合じゃないだろう。