訳詞という難物10

前回の、あるサイトによるQODの解説をかいつまんで言うと、QODとは、内面的なものより、外見が華やかに見える人のこと。歌詞では、Desperadoに対して、QODが有する富に惹かれることのないように忠告している。
メタシンボロジーの立場から言えば、QODとは慈善家、芸術家、音楽家などを指す。
一見筋の通った説明に見えるが、外見的華やかさと、富とは必ずしも共起しない。また、具体的にあげた慈善家、芸術家、音楽家がやはり外見が華やかとは限らない。だいたい、Desperado(ならず者)が慈善家だなんて、どう考えてもおかしい。
しかし、Desperadoが音楽家だとすることには一理ある。
この曲が収録されたアルバムのカバーには、イーグルスのメンバーがある実在したギャングたちに扮して写っている。
つまり、Desperadoとは、誰か特定の個人を暗示しているのではなく、自分たちイーグルス全体のこと、あるいはもっと広く、ミュージシャン全体のことをさしていると考えることができる。
そう考えると、"out ridin' fences"の部分を「どっちつかずにいる」とすることでそれなりに意味が通じる。
訳詞その3では、"out ridin' fences"を「どっちつかず」と訳していて、その次の部分を女性の立場から、「選ぶのなら自分を」と暗示するような訳し方になっている。
その部分を再掲する。

困ったひと…
どうして、気がつかないの?
ずっと、どっちつかずのままね
あなたの頑固さは相変わらず
あなたなりの理由があるのはわかっているつもり
今、こうして2人、楽しいことでさえ、
悲しみになることもあるっていいたいのでしょう?
あの人を愛してはダメよ

しかし、歌詞の内容から見て、Desperadoは二人の女性のどちらを選ぶべきかを迷っているわけではないことは明らかで、同じ理由で、ある女性に近づくべきか、そのままやり過ごすかで「どっちつかず」になっているのでもない。
QODといい、QOHといい、二人の違うタイプの女性を暗示するような見えるが、この解釈は捨てたほうがよさそうだ。