白いネコ現る4


捕獲器を現場に置いたのは、日曜日の早朝。しかし、捕獲器に猫をおびき寄せる餌などは置かなかった。
捕獲器による捕獲は言ってみれば一発勝負だ。一回失敗すれば、その後はもうない。猫に不信感を与えないように、慎重に事を運ばなければならない。
日曜日の昼ごろだったか、迷子ネコを探しているお家から電話があり、白いネコの目撃情報が他にもあったので、捕獲器を返してもらえないかとのことだった。
仕掛けた捕獲器はこの家族が、ある動物病院から借りたもので、そちらの情報のほうがいなくなったネコに特徴が似ているということだったので、捕獲器を返すことにした。
しかし、私が見た猫も、迷子ネコの可能性がなくなったわけではないので、同じ場所に私が持っている捕獲器を代わりに設置した。
捕獲器に実際に餌をおいたのは火曜日の夕方。気に入りそうなキャットフードを捕獲器の中に置いてみたら、次の日の朝にはなくなっていた。
思ったとおり、仕掛けた捕獲器の存在を猫は気づいていた。
これで一気に捕獲の可能性が高まった。今度は、捕獲器の中に、猫の好きなマタタビの粉末を捕獲器の一番奥に置き、捕獲器の入り口付近にキャットフードを置くことした。
マタタビは餌と違って、ネコの判断力を狂わせる麻薬のようなものだ。捕獲器に置くには一番適しているが、いきなりこれを仕掛けても、用心深いネコだと捕獲器には入らない。
最初に餌を置いておき、これを食べさせて、警戒心を解いた上で、マタタビを仕掛けると、ネコは、躊躇なく仕掛けに入ってくる。
次の日の水曜日の夕方に、マタタビとフードを予定通りに置いて、現場を離れた。その時間が夜の8時ごろ。いつも、白いネコが堤防に現れる時間だ。
8時半を過ぎたころ、現場に戻ってみた。
果たして、捕獲器には、思った通り白いネコがかかっていた。捕獲器ごと家に持って帰って明るいところで、かかったネコを見てみた。
明るいところで見てみると、どうやらそのネコは迷子ネコではないようだった。
念のために、電話で連絡を入れ、確認のためにきてもらうことにした。迷子ネコを探しているAさん家族のご主人が一人でこられ、そのネコを見て、やはり探している猫ではないと言われた。
かかった猫が迷子ネコだったら、これで一件落着だったのだが、そううまくは行かなかった。
画像は、次の日の朝に撮ったもの。捕まえた後に入れるケージを用意していなかったので、一晩狭い捕獲器で辛抱してもらった。