災害列島4

XRAINが、現在の観測網による情報の配信を始めたのは、2013年の9月5日のことだ。
また、気象庁の高解像度降水キャストナウの情報配信は、つい最近の2014年8月7日に始まった。
これらの情報配信は、いずれも、最近の局地豪雨に伴う災害への注意を国民に喚起し、ひいては早い段階での避難行動を促すためのものといえる。
しかし、どちらのサイトの情報も、災害発生の予想を明確に示しているわけではなく、これらの情報配信に基づいて、早めの避難行動をとるというのは、ほとんどの日本人には、まず無理だと思われる。
あらゆる種類の危機について、その発生を事前に予測し、その予測に基づいて予防や対策を採るか、あるいは退避行動をとるということがないというのが、大方の日本人であることは、このブログで以前に取り上げたことがある。
1. "Bury the head in the Sand"
http://d.hatena.ne.jp/eriosyce/20110126/1296049241
2. 「見ざる言わざる」
http://d.hatena.ne.jp/eriosyce/20131011/1381502733
いずれも記事も、日本人の多くが持つ、心理的傾向について書いたものだ。
たとえ目の前に危機的状況があっても、これを無視する心理的傾向を「正常化バイアス」とか「楽観バイアス」といい、他人の行動にあわせて、自分行動を決める心理的傾向のことを「集団同調バイアス」というが、日本人はこの両方が極めて強く、両者が連携して働き、退避行動を妨げる。
最近、大きな被害を発生させた広島の土石流でも、ニュース番組の中で、被災者の何人かのインタービューの中に、このことがはっきりと見て取れる。
「以前から危険な場所だとは思っていたが、まさか自分に降りかかるとは思っていなかった」(40代の男性)
「(近くで以前に起きた土石流に関して聞かれて)ああ、ぜんぜん他人事。自分におきるなんて思っても見ない」(60代の男性)
「安心しとったとですよ。自分の住んどるところは100パーセント以上、200パーセント安全やと」(80代の女性)
政府は最近の豪雨被害を受けて、自然災害の早期予測システムの構築に本格的に乗り出す方針を固めたようだ。
XRAINや高解像度降水キャストナウだけでは、住民の早い段階での避難行動に結びつかないと考えてのことだろう。
こうした予測システムが完成した暁には、早期避難のための情報を提供してくれることと思うが、上記二つの心理バイアスが強くかかった日本人の耳にこれらの情報が届くかどうか、これはかなり疑問である。