知性が大事#3

クジラ類の捕獲に関して全く相容れない価値観が対立している状況を、一種の戦争状態と捉えている彼らは、敵に打撃を与えるためなら手段を選ばない方向に進みつつある。
もちろん、文字通りの戦争ではないから、人命を奪うような行為には出ないだろうが、人命に直接影響のない手段なら何でも仕掛けてくると思って間違いがない。
WAZAが何度警告しても、JAZA側の反応が鈍いことに痺れを切らして、いきなり除名処分を突きつけてきた今回のことは、背景には反捕鯨団体の意向が反映されていることに間違いなかろう。
読売新聞の記事の引用箇所にあったように、反捕鯨映画「コーヴ」がWAZAの討議資料中にあったようで、これは反捕鯨団体がWAZAに対して何らかの影響力を持つ証拠だ。
日本では、この映画は反日的だという理由で公開されていない。
これも西欧流の表現の自由や情報の公開に最大限の価値を置く価値観からは許されないことで、彼らが怒りを覚えることのひとつだ。
映画「コーヴ」はアマゾンを通じてDVDが入手可能だが、三千円という代金を払ってまで、この映画を見る日本人はまれだろう。
この映画を見なくても、いわばその予告編のような映像が下記のサイトで見られる。
https://www.youtube.com/watch?v=uzuSULcqgxQ
この映像のナレーターを務めるのはマット・デイモン、いわずと知れたハリウッドスターだ。
反捕鯨団体の活動は世界を股にかけたもので、団体の本拠地は世界の各地にある。その活動は綿密、執拗で、これに同調する有名人も数多い。
ハリウッドスターをナレーターに起用するのも、アメリカや西欧諸国の一般大衆の関心を集めるのにこれほど強力なものはないからだ。
シーシェパードの派手なパフォーマンスは、ヒロイックな行動をよしとするアメリカ人の関心を引くのには最適だが、研究者や科学者のなかにはシーシェパードの行動には同調しない人もいる。
http://www.southernfriedscience.com/?p=15067
科学者らしい冷静な考え方のように思う。シーシェパードの派手々々しい行動は、注目される割には、実際の反捕鯨としての成果はほとんどないだろうとは、私もずっと感じていたことだ。
さて、JAZAへの除名の警告は、反捕鯨団体の戦略の転向を意味する。捕獲したイルカを転売できなくすることで、イルカの捕獲数を経済的理由から減少させようというのが目的だろう。
また、次の報道は戦略の転向に伴って、イルカの捕獲に更なる圧力をかけるため、非合法手段であっても用いる用意があることを示唆している。
記事は読売新聞5月27日付のものだ。

水族館のイルカの入手方法を巡って国際組織から批判を浴びた「日本動物園水族館協会」(JAZA、東京)のホームページ(HP)が今年3月、サイバー攻撃を受け、加盟施設の従業員の個人情報などが流出していたことがわかった。