日本人の英作文2016-15

童話「キツネのハンカチ」の続き。
今回の課題個所と訳文の例は次の通り。

課題文
その夜おそく、平井さんが、仕事場で、古いコートの仕立て直しをしていると、お店のドアがなりました。
時計を見ると、もう十時です。
「こんな時間にだれだろう」
訳文1
Late in the night, someone knocked the door when Mr. Hirai made over an old coat in his workshop. He looked at his clock and it was 10 p.m.
"Who's that so late."
訳文2
Late that night, when Mr. Hirai was altering an old coat, there was someone knocking on the door.
"It's almost ten o'clock. Who's coming, so late at night?"

「夜おそく」だったら"late at night"でよいが、「その夜おそく」だと、"late at the night"でよいかは分からない。
簡単そうで、正確な表現がなかなかわからないのが、こういう副詞句。
例によって米グーグルのBooks検索によると、"late at the night"、"late at that night"、それから訳文2で使われている"late in the night" のいずれもヒットがない。
訳文1の"late that nigh"がこうした場合の使い方のようだ。
ちなみに、"late into the night"という言い方は正しい。ただし、「その夜、遅くまで」の意味なので、ここでは使えない。
「…仕立て直しをしていると」の部分の訳で、訳文1は、whenで始まる副詞節に単純過去形を使っている。
訳文2はこの部分を同じくwhenを使って、過去進行形を使った。
ここで注意すべきは、主節の表す状況が「ドアがなる」という瞬間的なものであること。
一方、「仕立て直し」の作業は一瞬では終わらないから、主節と従属節の時制をすり合わせる必要がある。
課題文の場合は、訳文2のように、従属節のほうを進行形にすることで、alterという動作の一瞬を切り取ることができ、主節の状況とうまく整合する。
訳文1のように、単純過去形だと、従属節のmake overの作業中ずっと、誰かが、ドアをたたいていたように聞こえる。
「時計を見ると、もう十時です」と日本語のほうは現在形表現だが、日本語の現在形表現は、時制とは関係がない。
「〜しました」という過去形が繰り返されることによる単調さを避ける意味で、時折、現在形をはさむ。このことで表現の単調さを避け、物語の場合だと、臨場感を増すことができる。
「〜すると」をandで表現すると、この順番で動作や状況が変化したように聞こえる。
つまり、訳文1のこの部分を改めて日本語にすると、「彼は時計を見ました。それから十時でした」というような感じだ。ぎこちない感じがして不自然。
「こんな時間に誰だろう」も注意が必要。
訳文1の文を厳密にいうと、副詞句の"so late"の修飾しているものが不明。
そこで、訳文2は動詞のcomeを使ったのだろうが、comeの現在進行形だと、未来のことを表すことになる。つまり、「こんな夜遅くに誰がやってくるのだろう」という意味。
もうやってきているのだから、"Who has come so late at night?"とすべきところ。
訳例
Late that night, someone knocked on the door when he was making over an old coat.
He looked at the clock to find it was already 10 o'clock.
"Who has come so late at night?" he wondered.