日本人の英作文2016-14

課題文と訳文例二つを再掲する。

課題文
冬のある日のこと。
朝からふきあれた北風がやんで、空がキーンとすみわたりました。
暗くなると、空いっぱいに星がかがやいて、今にも光のしずくが落ちてきそうでした。
訳文1
One day in winter. The north wind having been raging since the morning stopped and the sky became all clear. After getting dark, stars were twinkling in the sky and they looked as if light drops were going to drip down any moment now.
訳文2
On a winter day, a north wind was blowing hard since this morning stopped blowing and the sky has cleared up.
Darkness brought out the brilliant stars that were spread all over the night sky. It looked like that a drop of stars was ready to fall at any moment.

「空がキーンとみすわたりました」の「キーンと」は擬声音というのかどうか。
実際の音を模したものではな、空の澄んだ様子を表しているから、何かそれらしい副詞で表現すればよい。
問題はその次の「光のしずく」。
訳文1は、"light drops"とし、訳文2は、"a drop of stars"と訳した。
いずれにしても、比喩表現になる。比喩表現は言葉をそのまま直訳しても、通じないことが多い。
英語にある比喩表現にしないと、何のことかわからないからだ。
この点から考えると、訳文1も訳文2も、日本語を直訳しただけに見える。
そこでネット検索。
まず、"light drops"のほうは、グーグル一般検索でもBooks検索でもそれなりのヒットがあった。
dropsを名刺で使っている場合はヒット件数の約半分。残りはdropを動詞で使った例だった。
名詞で使ってある例を見ると、光を宿した液体のもの、例えば太陽の光をょあびた雨粒だとか、水しぶきだとかを表すのに使うようだ。
星の明かりを"light drops"で表現できるか微妙なところだが、言葉としては存在する。
一方、"a drop of stars"のほうは"a drop of..."がもっぱら、液体の一滴を表現するのに用いられるので、"..."の部分に液体が来ないと変な感じになるかもしれない。
ちなみに、"a drop of star"は立山方面で売られているお菓子の銘柄らしい。日本語では、「星の雫」。いかにも日本人が考えそうな英訳。
訳文2の"Darkness brought out..."の文は、一見、よくできているように見える。
しかしいくつかの問題点がある。
まずdarknessが無冠詞なので、抽象的に「暗闇」という意味になっている。日本語なら、その前に夜になった状況が述べられているので、夜の暗闇のことだと、意味を補って理解する。
英語はそうではない。どの暗闇のことか表現者側で特定しておかないといけない。
次に、関係代名詞の限定用法を用いているが、これが問題。
先行詞を定冠詞で限定しているため、限定されたものに、暗黙で対照されるものがあることになってしまう。
訳文の場合だと、夜空に出てこなかった星々が対照されている。
また、その関係詞節の表現も受動態なのに動作主体がよくわからない表現になっている。
主節の主語のdarknessがここでも意味上の主語だとすると、受け身にする必然性がない。
この文の表現を生かして、それなりに通じるようにするには、次のようにする。
The darkness of night brought out brilliant stars and spread them all over the sky.
訳例
On a winter day, a north wind, which had been blowing hard since that morning, ceased and the sky cleared up beautifully. After getting dark, it was full of stars and it seemed as if light drops were going to start falling down at any moment.