日本人の英作文2016-16

童話「キツネのハンカチ」の続き。
今回の課題部分と訳文の例は次の通り。

課題文
平井さんは、ドアをあけて、ぽかんとしました。大きなエプロンをしたキツネが立っていたのです。
「夜分おそくすみません。明かりがついていたので、ノックしてしまいました。
ちょっと、ここをなおしていただけませんか?」
訳文1
Mr. Hirai opened the door and looked blank. A fox wearing a big apron was standing.
"I'm sorry to disturb you late. The light was on in the room, so I have carelessly knocked. Can you mend this a little?"
訳文2
Hirai-san opened the door and stared vacantly. Because a fox was standing in a big apron.
"I'm sorry to disturb you so late at night. Seeing the light, I knocked on the door in spite of myself. Well, would you make this part of clothes over?"

「ドアをあけて、ポカンとしました」の部分。
訳文1は、「ぽかんとした」を"looked blank"とした。
look+形容詞は、ある人物を他者から見た時の様子を表すのであって、その本人の精神状態を表すのではない。
「ぽかんとした」は平井さん本人の精神状態を表しているから、look+形容詞は適切ではない。
訳文2の"stared vacantly"は、何を見つめたのか不明。
他動詞であれば、目的語をつけ、stareのような自動詞でもstare at+ヒト、モノが普通である場合、目的語にあたる語の省略はそれまでに出現していて、省略可能場合に限る。
また、訳文2は、二つの目の文をbecauseで始めたが、前文の状況なり、動作の理由を述べる分を次の文で、becauseで始めるのは日本人のよくやる誤り。
becauseを副詞節にして、前の文を複文構造にするのが正しい。
今回の課題部分で、一番難しいのは、「ノックしてしまいました」の「してしまった」のニュアンスをどのように表現するかという点。
訳文1は現在完了形を用いた。「〜していた」「〜している」という表現を完了形で表現するのが適当な場合がある。
前者の場合、過去完了形、後者の場合、現在完了形で表現できる。
例えば、次のような日本場合。
1. 私がうちに着いた時には、夫はもう、家を出てていた。
2. その仕事はもう終わっています。
英語は次の通り。
1. My husband had already left when I got home.
2. I've already finished the work. または、The work has already been done.
しかし、課題部分の場合、完了形は適当ではない。
また、「してしまった」のニュアンスを副詞のcarelesslyでは表せない。
キツネがドアをノックしたのは、不注意でしたのではないからだ。
この部分の適切な表現はcannot resist ...ingという表現がぴったりくると思う。
なぜこの表現がいいのかの説明はかなり長くなるので、別の記事とする。
訳例
He opened the door and was surprised to find there was a fox wearing a big apron standing in front of him.
"I'm sorry I visited you so late at night. I couldn't resist knocking on the door because the light inside was on. Would you mind stitching here?"