新たな子犬たち13

里子に出して、20日弱。ブンタはずいぶん成長していたが、その表情には、不安とおびえの入り混じったものがあった。里親家族にうまく懐いていないことが考えられた。
やはり人に懐かないまま里子に出したのが間違いかと思っていた矢先の4月20日、ブンタの里親から電話があり、ブンタが家族にまったく懐かない上、その家の子供に噛みついたという。
電話の様子から、もうこれ以上ブンタを飼い続けるのは難しいと思っているようなので、早速ブンタを引き取りに里親宅に出向いた。
ブンタは、大き目の丈夫なケージに入れられていた上、ケージの扉には厳重に鍵が掛けられていた。何でも、そうでもしないと脱走する恐れがあるという。

  • ケージの中のブンタ(2011年5月8日撮影)


これまで保護した野犬の子はいずれも大変頭がよく、簡単に開けられるようなケージの扉では、飼い主の動作をよく見ていて、開け方を覚えてしまう可能性がある。
まあ、仕方がなかったのだろうが、これではケージが完全にブンタにとって牢屋になってしまっていた。
こうしてブンタはまた家に舞い戻ってきた。それからまた20日弱が経過したが、人間に対する不信感を増大させてしまったブンタの心を解きほぐすことは容易ではない。
まず人間に馴らす必要があるので、最初に連れ帰ったときのように、庭に放すのではなく、ケージに入れて人間は自分の世話を良くしてくれる存在であることを覚えさせなければならない。
ブンタは今日もケージの中。相変わらず、ケージの中から、不信に満ちた目をこちらに向けている。