沈黙の秋3

CCDを起こす原因は何か。同書はこれまでにあげられたいくつもの説を丹念に取り上げている。携帯電話説、遺伝子組み換え作物説、地球温暖化説、ウイルス病説、真菌病説などである。
しかし、これらの説はCCDのある一面をよく説明してはいるが、CCDの現象の全てを過不足なく説明できない。矛盾点が多すぎるのだ。
これらの説を一通り紹介した後、同書が章を改めて、詳しく説明しているのが、問題のネオニコチノイド系農薬を含む農薬とCCDの関係のことだ。
その一部を以下に引用する。

イミダクロプリド」は、最も人気の高いネオニコチノイド系農薬で、世界で今もっともよく売れている殺虫剤の多くに使われている。
この薬剤は単に農作物に使われているだけではない。ペットにノミ駆除剤の「アドバンテージ」を使っているなら、あなたもイミダプロクリドの利用者だ。ここでもこの薬剤は完璧に働く。たとえどれだけ犬や猫が体をなめようと、ペットは殺さずにノミだけを殺してくれるのだから。芝生やゴルフコースに「メリット」を撒いているとしたら、やはりイミダクロプリドを使っていることになる。ここでもイミダプロクリドは、犬や猫や、ヨチヨチ歩きの子供や下手くそなゴルファーなどは殺さずに、土壌中の虫だけを殺してくれる。スーパーマーケットの「ウォルマート」店内を歩けば、イミダプロクリドが含まれているたくさんの商品にお目にかかることが出来るが、その中には、考えもしなかったような商品もある。虫の被害も防いでくれるというオールインワンの花用栄養剤や、「ワンシーズンずっと効果がある」ことを謳っている地虫対策の薬もそうだ。アメリカ合衆国とヨーロッパでは、少なくとも七種類のネオニコチノイド系農薬が販売されているが、その中でも最もよく使われているのがイミダクロプリドだ。1エーカー用の価格は、アメリカでは20ドル。中国ではたった2ドルで売られている。

ネオニコチノイド系農薬は神経を麻痺させる毒性を持つことから、ミツバチの方向感覚を狂わせる慢性的作用があっても不思議ではない。
方向感覚の狂った蜂は、蜜を求めて、巣箱の外に出たときに、帰巣できなくなる。
CCDの場合には、蜂の死骸が巣箱の近くでは見つからないというのは、帰巣できなくなった蜂が巣箱からずっと離れた場所で死んでしまうからと考えると、ネオニコチノイド系農薬がCCDの原因物質である疑いは強まる。
しかし、致死量に達しない微量の農薬の長期的影響に関しては、データは何もないと同書はいう。
さらに、ネオニコチノイド系農薬と、その他の農薬の相互関係もCCDの発生に関わっているかもしれないが、単一の農薬に関しての長期検査もされていないのに、複数の農薬の相互関係、複合汚染の作用を調べるための検査など、まったく考慮のほかであるとも書いている。
CCDの原因特定の難しさは、まさにここに胚胎する。