右か左か?15

さて、時計の針の動き方に関して、参考にする日時計のタイプで、ずっと後の時代の植物のつるの巻き方についての論争が左右されるとは、機械時計の発明者は考えもしなかっただろう。
それはともかく、次に、これまで見てきた判定法のうちのどれが合理的かを考えてみる。
一見、どの判定法にも、それぞれの論拠があって、どれでもいいように思えるが、植物のツルの巻き方に関しては、そうでもないようだ。
画像1
画像1は、下垂してツルを巻く植物の例だ。このツルの巻き方について、牧野式ではどう判定するのだろう。
ツルの状態をそのままに考えると、ツルは鉛直方向の下方に伸びているから、アサガオのツルの場合とは逆に、ラセン階段を下りていく人間の視線を想定するのだろうか。
そうすると、画像1のツルは左巻きということになる。
アサガオも牧野式では左巻きだが、成長方向が上下入れ替わっているため、ラセンの外形パターンが違っている。
ラセンの外形パターンが違うのに、同じ左巻きということでいいのだろうか。
下垂するツルならまだしも、ツルが横方向に伸びている場合はどうするのか。
ツルをそのままの状態で、視点をツルの先端に移したとして、ツルの動きは、左右の判定がつかない種類のものだ。

  • 画像2

画像2と3はゴーヤーのツルだが、この場合の巻き方はどうなるのか。ゴーヤーのツルは、アサガオなどと違って、ツルが巻き付きながら伸びていくのではなく、ツルの先端が何かに触れると、そこに、数回巻きついて、ツルを固定させる。
その上で、巻きついた部分から茎のほうに向かう部分が、2箇所、反対方向にねじれて、二つのラセンパターンを形成する。
この二箇所のラセンの部分を、牧野式では、どう判定するのか。
判定するためには、下垂するツルであれなんであれ、どれも、アサガオと同じように、ツルの元から先のほうに向けて、鉛直方向の上のほうに伸びていると仮定するしかない。実際の植物の状態と異なる仮定をしないと判定できない方法というのが合理的といえるかどうか。
同じ疑問が、ツルの成長を真上から観察して判断する判定法にも起きる。
下垂するツルの場合には、真下からそれを観察するのかどうか。横に伸びるツルだと、横方向からの観察になるのか。

  • 画像3

ゴーヤーのツルの場合だと、どうするのか。ゴーヤーの場合、ツルの先端部分はともかく、先端が巻きついた後にできるラセン部分は、ツルの回旋運動など観察できない。
clockwise/counterclockwiseの判断の対象にはならないラセンのでき方といえる。
ツルの巻き方に関して、成長運動の方向性で判定する方法はこのように、どう判定するかに疑問の余地のある場合が出てきてしまう。
植物の研究者の間でも、ネジの右ネジと同じように、ラセンの外形パターンで判定するのが、合理的であるとする人がいるのは、このためだ。