日本人の英作文8

canとthinkの共用以外にも、「〜と思う」については注意すべき点がまだある。
これについては次の日本語をたたき台にする。
1. 「私は割り箸に関して、ルールがあると思う。」
この文の「思う」の部分を、「思える」「思っている」「考える」などに変えてもさほど意味は変わらない。
どの文も、割り箸に関するルールがあることについての個人的意見と受け取れる。
ところが、「思う」の部分を否定形に変えた次の文、
2. 「私は割り箸に関して、ルールがあると(は)思わない。」
この文の場合、初出の個人的意見ではなく、すでに存在する一般的認識、あるいは先行する別の人の「ルールがあると思う」という意見に対する異論、または不同意を表している。
もし、これが同じ内容で、初出の自分の意見として発表する場合だと、
3. 私は割り箸に関するルールはないと思う。
とするのが自然だ。
2.の形式でも、「思う」内容が個人的なことに関する場合、そのことに関して、他人の意見などあるわけがないから、3. の形式をとらなくても、個人的意見になるが、一般論などに対して、2.の形式をとると、異論、不同意の表明となる。
どちらでもいいように思うかもしれないが、I think that...もI don't think thatも、どちらも、個人的意見を表していて、他人の意見に対する不同意を表していない。
不同意を表すには、I don't agree thatとしなければならない。
think that...のthat節が否定文である場合、thinkの部分を否定形にするのが、英語では一般的とされる。
英語では、どちらの形式を使っても意味が同じだからそれでいいが、日本語では、2.と3.の文では意味が違っているから、2.文を
I don't think there are rules about chopsticks.
としたのではだめなのだ。