日本人の英作文2014-1-9

今回の課題文と作文例は次のとおり。

課題文: 「スノードームよ。気に入らなかった?」
「そんなことないよ。きれいだし」とぼくは答えた。
それから、おばあちゃんが焼いたチキンを食べて、駅前のケーキ屋さんで買ってきたケーキを食べた。ぼくはときどき、スノードームをふって、玉のなかに雪を降らせた。あんまり、いや、ちっともおもしろくなかった。
作文例1: "Here, this is a snow-dome for you. Don't you like it?"
"Yes, I do. It is beautiful and," I replied. Then I ate a chicken leg which my grandmother roasted and a piece of cake which she bought at a cake store in front of a station. I sometimes shook the snow-dome to enjoy falling snow in it. It was not so fun. To tell the truth, it was not interesting at all.
作文例2: Enjoy your snowdome. Oh, don't you like it?"
"Yes, I do. It's beautiful. Thank you." said I. Then we ate roast chicken she cooked and some cake she bought at a bakery near the station. I occasionally shook the snowdome and saw the snowflakes falling down in it. It wasn't so exciting. In fact, I was really bored.

「気に入らなかった」と部分をどちらの作文例でも、否定疑問文にしている。否定疑問文には注意を要する点がいくつかある。
否定疑問文には、いくつかの意味があり、文脈や内容によって意味が違う。次のような例文を考えてみる。
1. Isn't this flower beautiful?
2. Don't you go?
1. ように、あるものに関する評価に使われた場合、このせりふを使った本人はthis flowerを、beautifulだと思っていて、その場にいる相手に、同意を期待している。
先に、その相手がbeautifulではないような評価をした場合には、自分はbeautifulと思っているのに、相手がそう思わなかったことに対する驚きや、場合によっては非難を表している。
2.のように、相手の行動や行動の予定に関して、自分の予想とは違っていた場合、意外だという驚きや、翻意を促す気持ちを表している。1.の場合の後半の使い方に対応する。
また、否定疑問に対する答えは、疑問文の質問形式にかかわらず、自分の行動、判断が肯定文で表される場合は、yesで、そうでないときにはnoで答える。
以上のことを考慮すると、どちらの作文例でも、この文脈で否定疑問を使うのは正しい。なぜなら、おばあちゃんはぼくがスノードームを気に入ると思ってプレゼントしたのに、ぼくの反応は予想外に鈍いものだったからだ。
「チキンを食べた」の部分を作文例1は"a chicken leg"としたが、これでは、調理をしていない、「鳥の足」を一本食べたことになってしまう。
作文した本人によれば、小さな子供がroast chickenを一人で丸々一羽分を食べられないからというのだが、作文例2のように"eat roast chicken"すればいいことで、考えすぎだろう。
ちなみに、いわゆる「鶏の足」は英語では、drumstickといい、調理名としては無冠詞単数で用い、出来上がったもの、そのものは単数形も複数形も存在する。
したがって、作文例1の作者の考え方を反映させるには、"eat a drumstick"とすればよい。
「駅前のケーキ屋さん」の部分を作文例1は、"a cake shop in front of a station"、作文例2は、"a bakery near the station"とした。
「ケーキ屋」や「駅前」は、作文例のどちらの表現でもかまわないだろう。問題は、stationの前の冠詞を定冠詞にするか不定冠詞にするかだ。
公共の施設には、定冠詞を使うことになっている。それは、あるコミュニティにおいて、通常、鉄道の駅はひとつに限られているからなのだが、日本のように、いくつもの駅が利用可能な場合、"the station"といっても、いわれた方はどの駅のことかはまったく分からない。どちらを使っても、間違いとはいえない。
「ときどきスノードームを振って」の「ときどき」を作文例1は、sometimesで表現したが、sometimesは別々の機会に、同じ行動が繰り返された場合に使う頻度副詞のひとつなので、同じ機会に繰り返された行為に使うことはできない。これは、作文例2に使われたoccasionallyでも同じ。
知っていると思っている単語ほど、改めて英英辞典を引く習慣をつけない限り、こうした間違いに気がつかない。
「雪を降らせた」の部分で、作文例1は、"enjoy falling snow"としている。
enjoyは動名詞を目的語にとり、「〜するのを楽しむ」という意味になる。この部分がその意味だとすると、fallingの目的語がsnowということになるが、fallには自動詞の用法しかない。
fallingをsnowを修飾する現在分詞だとすると、「降る雪を楽しむ」となるが、スノードームのなかに、本物の雪が降るはずもなく、例えとしての「降雪」というなら、定冠詞をつけて意味を限定する必要がある。
また、作文例2は、この部分を"saw the snowflakes falling down in it"とした。
定冠詞をつけたので、本物ではないsnowflakesでもOKで、この部分はよいとして、動詞をsawにしている点は少し問題だ。
seeは、「見る」という意識的なものではなく、「見える」または「目に入る」という受動的感覚なので、この文脈にふさわしくない。
また、fallingという現在分詞を用いたので、目に入ったのはほんの一瞬のことになってしまう。
作文例: "This is a snow-dome for you. Don't you like it?"
"Oh, certainly I do. After all, it's beautiful." replied I.
Then I ate roast chicken made by her and some cake she bought at a cake shop in front of a station. I shook the dome several times to make the falling snow scene in it. It was not so interesting, if not boring.