リズム音痴6

演歌の大物歌手Aの場合と似たようなことを、ごきげんようとは別のトーク番組で見たことがある。放送はこちらの方が早かったかもしれない。
このトーク番組は、ゲストが一人だけ登場し、聞き手は局アナ二人が勤めるというもの。
この番組のその日のゲストは、歌手B。16歳でデビューした彼女は、アイドル全盛時代の中で、歌唱力のある実力派とみなされていた。
番組の冒頭部分で、聞き手のアナウンサーが、彼女の最近の音楽活動について質問したところ、
「今、カバーアルバムの録音の最中なんです。その中の一曲に『飾りじゃないのよ涙は』を入れようという話になったんですが、これが難しいの。ほら、陽水さんも明菜ちゃんも、鼻歌交じりで軽いのりで歌っている感じだったでしょ。でも実際に歌ってみると、ものすごく難しい曲だって分かったんです。」というような趣旨のことを語った。
Bが中森明菜の「飾りじゃないのよ涙」を難しく感じたのは、おそらくそのリズムのせいだろう。
Bにデビューから曲を書いてきたのは、いわゆる歌謡曲の作曲家で、その曲には、オンビートのみが使われていたのだと思う。
演歌の大物歌手Aと同じく、日本の歌謡曲だけ歌ってきたBには、陽水が作曲に用いるリズムにうまく乗れなかったに違いない。
発売されたカバーアルバムには、「飾りじゃないのよ涙」も収録されていて、彼女は難しいと感じながらもこの曲を歌いきることが出来たようだ。
この曲は、陽水の曲を練習するために、私が購入したCDにも陽水自身が歌っているものが収録されていた。
しかし、リズム音痴の私がこの曲を陽水の歌声に合わせて歌おうとしても、まったく歌にならない。リズムがつかめず、支離滅裂の歌になってしまう。
歌唱力のあるとされる歌手のAやBでも、曲にうまく乗るのが難しい陽水の曲を、私がうまく歌えなくても、全然恥じることじゃないんだと、上記の二つの番組を見てからは、ずっと気が楽になったことを覚えている。