去る鳥と来る鳥

ちょっと前の3月21日、春分の日の次の日の朝のこと。
いつもどおり、家の北側にある洗面所の出窓の外側にしつらえた餌入れに、ミルワームを9匹入れた。
待っていたとばかりにオスのジョウビタキが餌入れに飛んできて、中のミルワームを全部食べた。
以前は毎年のように、渡ってくるジョウビタキミルワームを与えていたのを久しぶりに再開した。
去年の5月に保護したスズメが、去年の12月中ごろから急に弱って、ミルワームしか食べなくなってしまい、そのスズメのためのミルワームを常時、備える必要があった。
このスズメが、3月に入って、元気を取り戻すと、食べるものも、元通りの殻付きのアワになり、もうミルワームはあまり食べなくなった。
そのため、買い置きしてあったミルワームが無駄になりそうだったので、これを時折、近所の庭にやってくるジョウビタキの与えることにしたというのが、ジョウビタキの餌付け再開の理由。
この辺りにジョウビタキが渡ってきたのは,11月1日のこと。近辺、別々の5箇所か、6箇所でこの日、ジョウビタキの姿を目撃した。
ヒタキ科の渡り鳥の多くは、群れでシベリア方面から渡ってくるらしく、ジョウビタキも、群れで日本にやって来て、ある所まで来ると、大部隊が、小部隊に、さらに小部隊が、個々バラバラに散開して、冬越しの間、それぞれが自分の縄張りを張って、そこで過ごすのかもしれない。
同じヒタキの仲間のキビタキには有名な「キビタキ船長」の話がある。
http://www.ric.hi-ho.ne.jp/birdbanding/kibitakisencho/0830.shtml
このエピソードを知ってからは、ジョウビタキも同じように過酷な旅を続けて、ようやく日本にたどり着いたのだろうと思うようになった。
その一羽が、毎日のように、窓辺の餌入れにやってくる。自分が飼っている鳥ではないが、いつの間にか、やってくる小鳥に親近感を覚えるようになる。
そして、連休明けの3月22日の朝。この日も餌入れにミルワームを入れた。
ところが、いつもなら、ミルワームを入れるなり、やってくるジョウビタキの姿が見えない。
屋根の上に上がって、辺りを見回しても、どこにも見えない。近くにいると、ジョウビタキの独特の地鳴きの声がどこからともなく聞こえてくるのだが,それも聞こえない。
正午近くになっても姿を現さない。
どうやら、21日はよく晴れて、暖かかったので、この日を旅立ちの日と定めて、ジョウビタキは北国に帰って行ったのだろう。
餌入れには、ミルワームがそのまま残っていた。
こうしたときの、なんともいえない空虚感というか、寂しさは可愛がっていたペットが死んでしまったときに空虚感に似ている。
渡り鳥だから、別に死んだわけではなく,秋の深まる頃には,またその姿が見られると分かっていても,それでも,寂しさには変わりがない。
ジョウビタキと入れ替わるように、ちょうど今の時期,南の国から渡ってくるのがツバメ。
そういうと、今年はまだツバメの第一陣がやってくるのを見てはいない。