家の中から返事があり、女性が玄関の扉を開けて、顔を見せた。
やつれてはいたが、近々、亡くなるようなことはないだろうという印象だった。
「犬やインコは元気にしてる?」と訊くと、体の調子がよくないから、行きつけの病院に行って、入院させてもらうようにする。ついては鳥を何とかしたいという。
「それじゃ、家で引き取って、里親を探そうか」と水を向けると、そうしてほしいという返事だった。
都合のよい日を選んで、引き取りにくることにした。
その日から、ほんの数日後に、女性から電話がかかってきた。病院にいって入院させてくれるように頼んだが、病院の回答は、今は時期が悪い、訪問看護という形で、自宅療養してもらうということになったらしい。
自宅療養するに当たっては療養に使う部屋に動物がいてはいけないということで、急いで鳥をひきとってほしいといってきた。
女性の自宅に出向いて、家の中に入った。中は散らかり放題のごみだらけ。いわゆるごみ屋敷状態。
療養に使うという部屋に入って驚いた。
鳥かごが5つ、それぞれに違う種類のインコのためのようだった。一つのかごには種類の違うインコ2羽が同居していた。また一羽のインコはかごの外に出たまま、ギャーギャーといううるさい泣き声を上げながら部屋の中を飛び回っていた。
その声に反応するように、他のインコたちが鋭い叫び声を上げ、そのうるさい鳴き声に反応して、犬がぎゃんぎゃんというようなうるさい声を発しながら部屋中を走り回っていた。
犬が走り回ると、部屋の床に積もった鳥の羽毛がもうもうと舞い上がった。
合計6羽の違う種類のインコ。緑色のインコだけかと思っていたが、6羽もいたのだ。
どの鳥かごもインコの糞がうずたかく積もっていて、中に入れてある水も濁って汚かった。
そんな状態なのに幸い、どのインコも弱るということもなく、元気そうだった。
なんだか、ホラー映画「恐怖のインコ屋敷」とでもいいたくなるようなこの世のものとは思えないシーンが目の前に広がっていた。