マロ1

河川敷で暮らす子犬たちがいなくなって10ヶ月。ようやく、つらい記憶も薄れ掛けた12月の中ごろ。いつもどおり、ヨシをつれて、自転車で川岸の遊歩道を散歩中のことだった。
例の現場近くを通りかかり、ふと堤防のほうに目をやると、そこに、一匹の子犬の姿があった。
目を疑ったのは、その子犬が2月に捕獲された子犬のうちの一匹、黒毛の子に毛色が似ていたことだった。大きさも捕まった子犬と同じぐらいだったので、一瞬、捕まった子犬が脱走して、現場に戻ってきたのかと思ったほどだ。
しかし、捕まったのは2月のこと。子犬が成長しないで、そのままの大きさということなどあるわけもなく、別の犬であることは明白だった。
捕獲された子犬のときは、一瞬の判断の誤りが、つらい結末を招いた。そのことが常に頭にあったため、その子犬の姿を見るや、なんら迷うことなく、堤防ののり面を駆け上がり、子犬を抱き上げていた。

  • 拾った子犬(2008年12月17日撮影)


周りには、親らしい犬の姿もなく、人影もない。人家のまったくないところなので、近所の飼い犬が迷ってそこにいたという可能性は、ゼロに等しい。
子犬はがっしりした足をしていて、成長するとかなり大型になるような気がした。
がっしりした体格にもかかわらず、その子犬は堤防ののり面を登りきることも、また居た場所からのり面を下って、遊歩道に出ることも出来ず、同じ場所でかなり長い間、立ち往生していたようだ。
抱き上げた子犬を自転車の前かごに入れ、うちに連れ帰った。
家で飼うという決心は、このときもう既についていた。