タロ・ジロ・サブ1

マロを拾って一年近く、すっかり成犬となってからも、マロは庭から一歩も外に出なかった。相変わらず、自転車での遊歩道の散歩は、ヨシだけをつれて出て行っていた。
そんな去年12月のある日、河川敷遊歩道をいつもどおり、川下に向かうコースを走っていて、その日が水曜日であることで、ふと一年前のことを思い出した。
マロを拾ったのも確か同じ水曜日。日付は確か12月16日。マロを拾ってからほぼ一年が経過している。そんなことを思い出しているうち、マロを拾った現場に通りかかった。マロは土手ののり面で、立ち往生していた。
まさかまた、同じように、子犬がそこにいるわけないなと思いながら、マロがいた辺りに目を向けた。
動くものは何もない、いつもどおりの土手が続いているだけだった。
そりゃそうだ。そんな偶然があるはずがないと思いつつ、散歩を続けた。
川下への散歩のコースは、マロがいた場所から、500mほど川下に下った場所をUターンして、帰宅するというもので、その日も同じUターン場所に程なく到達した。
その場所には、少し広いスペースを設け、ベンチもいくつか置いてあり、ヨシの息が上がっている場合は、少し休憩時間を取ってから帰宅することもある。

  • タロとジロ(2009年12月22日撮影)


その日は、休憩も取らず、即座にUターン。もと来た道を戻り始めた。
戻り始めて、マロを拾った場所がもうすぐというところで、左手の土手のほうをふと見上げると、なんとそこには、子犬の姿が。
「ウソだろ」。思わず叫んでいた。
自転車を降り、のり面を上って子犬に近づいても、子犬は逃げようとしない。逃げないのではなく、まだ逃げられるだけの体力がついていないようだった。
のり面を上って、堤防の上に出ると、すぐ近くにもう一匹の子犬がいた。