日本人の英文法28

ここで、問題提起に使った例文1を振り返ってみる。

例文1 Hashimoto has advocated to stop the overlapping administration between Osaka Prefecture and Osaka City.(Oct. 22_Xinhua)

Hashimotoが、二重行政解消を最初に提唱したのは、この記事が書かれるずっと以前のことだが、Hashimotoはその後も同じことを繰り返し主張しているから、主張の内容が今も過去のことになってはいない。最初の提唱から時間が経っていても、主張の内容が今も生きたものであることを示すため、現在完了形を使っていると考えられる。
これは、完了形の用法のうちの継続と考えてもいいだろう。
しかし、この同じ文が、Hashimotoが最初に、二重行政解消に言及した、その日の記事で書かれたのであれば、継続というより、完了形用法のうちの完了または結果と考えられるが、いずれにせよ、主張の内容が記事を書く時点での、Hashimotoの動向に関する最新情報である点では、同じと考えられる。
新聞記事は、もとより歴史について書くものではなく、現時点での最新動向を書くものだ。流動的で、この先どうなるかがわからない事に関して、過去のある時点から、現在までの時間の中で、事象を捉えることの多い新聞記事では、現在完了形が多用されるのは自然なことだ。
新聞記事でよく見る完了形に関して、これを完了形の用法のどれに相当するかを区別しようとするのは、あまり意味のないことだろう。
同じ文が、文脈やそれまでの動向に次第で、経験にでも、完了にでも、あるいは継続にでも理解できるからだ。

次に、例文2について考えてみる。
例文2 I have been with the ghost. (The Canterville Ghost)
この文は、Oscar Wildの小説The Canterville Ghostを英語学習者向けにretoldしたテキストの中に出てくる一文だ。
このテキストはOxford University Pressの学習用retold seriesの中の作品の一つで、難易度がstage 2となっていて、中学生でも理解できる文法で書かれている。
問題の文は、学校英文法では、典型的な継続を表す用法だから、主語Iがこのせりふを発するときに、その場にghostは居なければならないはずなのだが、小説の中の状況では、その少し前にghostとは別れていて、その場にghostは居ない。
一体どう理解すればいいのか。