関係代名詞の制限(限定)用法について1

「日本人の英作文2015-12」の記事で、訳文例に次のような文があった。

1. Tun-chan who was dropped from a nest flew at the very first among the brothers.
2. Tun-chan that has been dropped from the nest could fly earlier than any other siblings.

上記の二つの文は、課題箇所の「巣から落とされたつんちゃんが、きょうだいの中でいちばん先にとべたのです。」を英訳したものだ。
それぞれ、問題点が複数あるが,ここで取り上げるのは,どちらも関係代名詞の制限(限定)用法を用いていること。
記事では、先行詞が固有名詞の場合には、制限用法の関係代名詞は用いられないとだけ書いた。
訳者が制限用法の「制限」の意味を理解していないからとも書いた。
どういうことかというと、上記二つの文の使い方だと関係代名詞以下の内容で、先行詞であるTsun-chanを制限、または限定しているからだ。
さらに有体に言えば、Tsun-chanに関して制限をしなければならないというのは、Tsun-chanが複数いて、そのうちの関係詞節が表す条件に合うものだけに対象を制限、または限定するというのが、関係代名詞の制限(限定)用法だからである。
私が指導しているグループには,こうしたこともすでに説明済みである。
それにもかかわらず、上記のような作文例は絶えることがない。
なぜかというと、日本語には、関係代名詞の制限用法に当たる、簡便で効率のよい記述法が存在しないからだ。
ここで、1.の訳文を関係代名詞節に限って、日本語に訳してみると、「巣から落とされたつんちゃん」となって、課題文の日本語となんら変わるところがなく、よって訳文にも問題がないように思える。
ところが、制限用法に相当すると思われる部分は、むしろ英語の非制限用法(継続用法)に近いものだ。
関係代名詞の制限用法は今でも中学校段階で学習すると思う。
関係代名詞が含まれた文を日本語に訳すとき、関係代名詞節が先行詞を修飾している形にするように指導される。
しかし、その修飾部分は決して被修飾語の内容に制限を加えるものではないから、関係代名詞の用法は、学習段階のしょっぱなから間違っていることになる。