新たな子犬たち2013-2-2


ノラが子犬を産んだと思われる場所は、中州の中で小高くなっている場所ではなかった。まだ梅雨も明けていない時期なので、6月19日、20日ののようなまとまった雨が降れば、水没してしまう場所だ。
水没してしまう可能性が高いのなら、事前に子犬を探し出して、保護すれば、生まれた子犬を助けられるのだが、夏の今の時期、中州の草むらは草丈が2mを超えるヨシと、刺だらけのイラクサ、その他の雑草が生い茂っていて、草下にじっとうずくまっている子犬を見つけることはまず無理だ。大雨になりませんようにと祈るしか方法がない。
そして、6月26日。南下していた梅雨前線が再び九州から、近畿にかけてかかり始め、朝から雨が降り出した。
降水量の予想を見ても例の場所が水没する恐れが十分にあった。そこで、まだ雨量がそれほどでもない午前8時ごろ、現場の様子を見に行った。
川の水位はすでに、通常より高くなっていたが、中州の草むらを洗うほどではなかった。しかし、雨は正午から、午後1時ごろにピークを迎えるという天気予報だったので、草むらが水没する可能性が高かった。
レインコートと長靴、軍手を着用していたので、足元や、草むらのイラクサを気にすることなく、子犬を探索できる。
思い切って、草むらを歩き回ってみた。母犬が飛び出してくれば、そのあたりを集中的に探せばよい。
しかし、レインコートを打つ雨音だけで、辺りには犬の気配はまったくしなかった。
このあたりで子犬を産んだと思われる箇所を念入りに歩き回ったが、子犬の気配はおろか、母犬の気配すら感じられなかった。
川の水位が上がって、いよいよ危険となれば、母犬は子犬を堤防の上に避難させるだろう。そう期待して、現場を離れることにした。
雨足は、現場到着時より確実に強くなっていた。