知性が大事#6

日本の諸事情に関して授業をしていたのは主にカタンニン高校。学年はyear7とyear8だったから日本で言えば、中学1,2年生のクラス。
また、オーストラリアに来てから一週間ほどはコーディネーター役の社会科の先生、仮に名前をメグとしておく。その彼女のお宅に滞在していたが、その後は生徒たちの寄宿舎で、生徒たちに混じって寝食をともにした。
オーストラリアはイギリスの文化を色濃く持つ国だ。寄宿舎の雰囲気はイギリス映画で見られるような学校の寄宿舎の雰囲気そのまま。実際のところ、兵舎か監獄に近いものがある。
最初は正直、戸惑ったが、生徒たちと寝食を共にすることで、生徒たちとの距離があっという間に縮まった。
その寄宿舎で隣のベッドにいたのがマイク。ちょうど授業を受け持っているyear8のクラスのひとつに彼はいた。
学校の勉強はいまいち。スポーツもあんまり得意じゃない生徒だったが、人懐っこく直ぐに打ち解けた。
そのマイクに夏休みの予定が決まらず、困っていることを話したところ、学期が終わる頃、生徒たちはそれぞれの親元に帰る。自分の父親もそのときに学校に迎えに来るから、一緒に自分のうちに来ないかと誘ってきた。
寄宿舎で暮らす生徒はカタンニンの町から遠く離れた農場が実家の生徒たちだ。オーストラリアは広い国だ。
西オーストラリア州だけでも日本全体の数倍の面積がある。カタンニン高校の学区も日本のそれとは桁違いの広さに及ぶ。
聞けば、マイクの実家はカタンニンの町の東方、約270kmほどのところにある農場だという。
オーストラリアでファームステイができる!こんなチャンスを逃す手はない。二つ返事で誘いに乗った。
しかし、このことをメグに話すとマイクはあんまりしっかりした生徒じゃないから、マイクの親に事前に話を通しておかないとよくないと釘を刺された。
それで、マイクに父親に電話をかけて、私がマイクのうちに滞在することを了承してもらえないかと頼んだ。
マイクが実家に電話をかけているときに、電話を替わりマイクの父親と話をした。全くの見ず知らずの人物に英語で話をして、さらにその家にしばらく泊まらせて欲しいと頼むのだ。今考えるとよくマイクの父親がOKをだしたものだと思う。
考えてみるがいい、自分がマイクの父親の立場だとして、あんまりしっかりしていない息子からの電話に出てみると、へたくそな英語の中年東洋人が自分の家にとまりたいと言い出す。
どんな人物か分かりもしないのに、普通、OKはださないだろう。交渉の結果、2週間ぐらいの滞在ならOKだという。
一学期最後の授業が終わった次の日、マイクの父親が寄宿舎にやって来た。他の生徒の親たちも次々とやってくる。
映画ハリポッターで、学期が終わるごとに、生徒たちが自分たちの親元に帰るシーンがあるがまさにあの雰囲気そのままの光景だ。
マイクの父親との初対面、背が高くオーストラリアの農民にしてはスリムな体型で、農民にありがちな粗野な感じは全くない穏やかな性格に見える人物だった。