知性が大事38

武田荘で田中に「あいつらに一発がつんと言ってやってください」と頼まれたものの、がつんと言うどころか、逆にボコボコにやられてしまった。
敵は日本人が考えている以上にこの問題に関心があり、日本人が主張することに対して、いつでもそれを粉砕するだけの反論を用意している。
以前に「ゼロの神話5」でも書いたことだが,日本人は敵の動静や、敵の能力に関して、いつも判断が甘い。
「ゼロの神話5」へのリンクはつぎのとおり
http://d.hatena.ne.jp/eriosyce/20130905/1378365954
クジラ問題に関しても、日本人の英米に対する発信力が弱いから問題になるのだと思っているようなら、とんだ勘違いだ。
例のシーシェパードは反捕鯨を基軸に全世界的反日活動を熱心に展開している。
何かというと直ぐに日本のやることにけちをつけてくる隣国にばかり気をとられていると,いつの間にか,日本が世界から孤立し、クジラなんぞよりもっと重大な国益を失うことになるのではないかと,私は危惧している。
次に挙げるサイトには、直接、捕鯨やイルカ漁とは関係のない,在外日本人が激しいバッシングを受けているという記事を載せたサイトだ。
私がオーストラリアでクジラ論争をしたのは,もう20年以上も前だ。そのときですら,日本人サーファーが地元サーファーから難癖をつけられるという状態だった。
事態はそのときより、かなり悪化しているようだ。
http://togetter.com/li/805329
クラスでのクジラ論争で,またまた落ち込んだが、その後のクラスメートは私に対して何もなかったように、普通に接してくれた。
語学学校での研修期間は2週間。当初の目的の英語力の向上という点では、それほどたいした成果は挙げられなかったが,20年以上がたった今でも全く色あせることのない数々の想い出を作ることができた。
研修の終了は、ちょうど学校の夏休みの終了時期でもあり,カタンニン高校の技術の先生の車に同乗させてもらい、カタンニンに戻った。
もうひとつ、語学研修中の出来事でどうしても書いておかなければならないことがある。
カタンニン高校で,破傷風ワクチンの接種を受けていないということで,その危険性を散々聞かされていたので,語学学校が休みの日曜日にパースの図書館に出向き,破傷風のことを調べてみることにした。
破傷風のことなど、平均的日本人は多分ほとんど何も知らないだろう。私も同じで,いったい感染するとどうなり,死亡率はどうなのかという基本的なことも知らなかった。
図書館の受付で、破傷風のことを調べたいと申し出ると,それに関連する書籍がある場所を教えてくれた。
そして、見つけた本は、かなり専門性の高い本だった。知らない単語がぞろぞろ出てきたが,おおよその理解はできた。
そして、あるページに差し掛かったとき、そこには、意外な人物との再会が待っていた。
その人物とは、北里柴三郎博士。破傷風の抗毒血清の製造法を発見した人だ。再会したというのは、私が少年時代に読んだ偉人伝の中の一人が博士であり,その偉人伝で見た写真と同じものがそのページに載っていたということだ。
内容を読み進めるにつれ、少年の頃に読んだ偉人伝の内容がよみがえってきた。
パースの図書館にあった本の内容が博士の功績をたたえるものであったため、クジラ論争で落ち込んでいた私には、力強い味方ができたような気がした。
破傷風はオーストラリア全土に広がっている病気だ。初期の頃のオーストラリアへの移住者たちは、この病気に苦しめられたに違いない。
その病気に対抗できる血清を作った博士の偉業は、反日の気運が強いオーストラリアにあっても高く評価されているのだ。
知性が高く、評価すべき業績を上げた人物であれば,人種にかかわらず,賞賛するにやぶさかではない。これが知性主義の国に共通する認識だ。
ずっと昔に亡くなっている人であったにもかかわらず,同じ日本人として,誇りに思う気持ちが,胸に熱く湧いてきた。
奇(く)しくも,今回ノーベル賞医学・生理学賞を受賞した大村氏は,北里大学栄誉教授だという。
欧米人の推薦なくして,ノーベル賞は受賞できない。欧米人が高く評価するもので勝負していく。これこそ日本人の進むべき道で、世界から孤立しかねない独自の価値観への固執は自らの墓穴を掘るだけだろう。