赤ちゃんの泣き声=ただの雑音1

3月27日のNHKの番組「ママたちが非常事態2」は、最新科学の知見により、母親たちが抱える悩みやイライラの原因を解明して見せた。
この番組の内容を分かりやすく要約しているのが次のサイト。
http://news.ameba.jp/20160328-1081/
悩みの原因は,日本の母親たちの置かれている状況が、「人間本来の子育て法」とはまったく違うことにあるという。
おもしろいと思ったのは、イクメンであっても,子供の状態に対する反応は鈍感で、これが母親のイライラの原因のひとつになっている点。
この番組では、その原因を男女の脳の反応の違いで説明していた。
女性には、そもそも子育てを順調にこなしていくための神経回路がいわばディフォルトで備わっていて,出産に契機にこの回路が起動されるらしい。
一方、男性には、そんな回路はまったく存在しない。
ただ、現実の子育ての経験をつむことで,徐々に子育てのための反応回路が形成されていくとしていた。
その回路形成に大きな役割を果たすのが,「愛情ホルモン」と称されるオキシトシンだという。
番組では、専門家が,オキシトシンはその役割から,「愛情ホルモン」というよりは,「子育てホルモン」または,「夫婦円満ホルモン」と言ったほうがいいとしていた。
男性の場合、経験により、反応の仕方に変化が出るという点は私にも思い当たることがある。
私は子供を育てことも,誰かの子供の世話をしたこともない。赤ちゃんをあやした経験も一度もない。
そんな私には、赤ちゃんの泣き声は,まさしく雑音以外の何物でもない。遠くで赤ん坊の泣き声がしても、心に何の反応も起きない。いや、「以前は、起きなかった」と表現したほうが正確かもしれない。
どういうことかというと、私は、子育て経験はないが,野犬が産んだ子犬や、野良猫が産んだ子猫はたくさん育てた経験がある。
子犬や子猫であっても、授乳の大変さは人間の赤ちゃんの場合とよく似ているように思う。
夜中であろうが、お構いないしにお腹がすけば,子犬,子猫は泣き声をあげる。そうなれば、起きてミルクを作って飲ませなければ泣き止まない。
人間の授乳期間に比べれば、子犬や子猫のそれは、大変短いが,私の場合,育てた子犬,子猫の数が数十頭に及ぶ。
こうした経験から、私には,子犬や子猫の泣き声に敏感に反応する神経回路が出来上がったらしい。
どんなに雑音の多い環境でも、遠くで泣いている子犬や子猫の泣き声を聞き取ることが出来るようになった。
それだけではなく、そうした泣き声に気付くと、居ても立ってもいられない気持ちが湧き上がるようになっている。
そして、子猫の泣き声というのが、なぜか人間の赤ちゃんの泣き声と泣き方のパターンというか,なんというかよく似ているのだ。
そのため、遠くで赤ん坊が泣いている声を、子猫の泣き声と聞き違えて,私の反応回路が起動されてしまうのだ。
よる夜中に、か細い泣き声がどこかでする。そわそわとした感情がわき上がり、私は、外に飛び出し、鳴き声のするほうに向かう。
あちこち歩き回って、その泣き声が,ある家の中からしていると分かると、私は心のうちでつぶやく。
「何だ赤ん坊の泣き声か。心配して損した」
私にとって心配なのは、捨てられたかもしれない子猫であって、人間の赤ん坊ではない。