赤ちゃんの泣き声=ただの雑音8

さて、脳の性差を思わせるエピソードには、私個人の特性とも男性全体の特性ともいえるかもしれないものもあった。
エピソードにあげた出来事の後で,読んだ本で多分、脳の機能の性差によるものだと分かったものだ。
そのエピソード。
4. ある知り合いの女性のうちに電話をかけた折のこと。
電話に出た彼女の声の背景で、テレビの音声らしいものが聞こえてきた。
「今、いい?」と私。
「いいわよ。ちょうどパンを焼こうと準備中」って、全然よくないじゃないかと思ったので、
「ああ、それなら後でかけなおそうか」と私。
「あら、いいわよ。作業は続けてるから」
電話の奥ではテレビの音声も途切れなく続いていた。
パン作り作業のほうはともかく、テレビの音声は私にはひどく煩わしかった。
大体、自分に電話がかかってきたとき、テレビを見ていたとしたら,それがどんなにおもしろい番組でも、私はテレビを消してから電話に出る。
余計な雑音がどちらの耳からでも入ってくると,電話の内容がうまく理解できなくなるからだ。
ところが電話向こうの彼女ときたら、私が電話をかける前から、テレビを見ながらパン作りをしていた模様。
そんなんじゃまともにパンが出来ないのではと思ったが、そこにかかってきた電話にテレビも消さず、パン作りの作業も中断せず、ちゃんと応答している。
会話中、突然彼女が大きな声で,「○○、もう宿題は終わった?」と言った。
「○○」は、彼女の子供なのだが、まるで自分が母親におこられたようで驚いてしまった。
「ごめんなさい。○○が宿題やらずに遊んでいるみたいなので、大声出しちゃって」って、テレビ見ながら,パン作りやって,その上でかかってきた電話に出て,なおかつ台所から離れた子供部屋にいる子供の様子に聞き耳を立てているなんて,あんたは一体、何者。
それで、「テレビ見ながらパン作って、○○ちゃんの様子もちゃんと気にかけているなんてすごいね」と言うと,
「あら、別になんでもないわよ。いつもやってることだから」と彼女。
聖徳太子は同時に10人の請願者の言い分を聞き取ることができたと言う。
これが文字通り、同時に聞き取れたとしたら,聖徳太子は男性であっても,脳のつくりは女性だと言うことになる。
男性脳は単機能、同時に複数の情報や作業をこなすようには出来てはいない。
とりわけ、右脳との左脳の別のところに中枢があるような異種の作業の同時進行はまず出来ない。
同じ中枢で行える作業でも,同時に別の情報が紛れ込むと混乱する。
女性の多くはこれがなんでもない。
女性の集まり、これを最近は、年齢にかかわらず、「女子会」と言うらしい。その女子会での会話は、男性諸氏のほとんどにとっては、騒音の塊だ。

ある特定の二人の会話に絞ってみても,ある話題について話していたかと思うと,次の瞬間、別の話題に飛び,隣の2人の会話に割り込んだかと思うと、またもとの2人の会話に戻りと、つかみどころがない。

話の内容に起承転結などないから,男性にとっては話がどこに向かっているのか,さっぱりわけが分からない。

これが複数個所で同時進行するのだ。これを中年男性が大好きな四字熟語で評すると、縦横無尽、支離滅裂、神出鬼没に本末転倒だ。

女子会に、もし男性が加わっても、ほとんどの男性は騒音の波に飲み込まれて、溺れ死ぬ。
聖徳太子は実は、世の中に女性の数だけいるのだ。