ウォーキングスタイル

飼い犬の散歩。雨の日や真夏の酷暑の時期を除いて行っている。最近は血糖値のコントロールという意味も加わって、血糖値センサーと腕時計を身につけた散歩に変わっている。

年末の頃、犬の散歩のとき、前のほうからやってきた人が声をかけてきた。以前から散歩のとき、たまに会う人で、いつもならビーグル犬の連れている方。

「今日はワンちゃんは連れてこられなかったんですか」という問いかけに、「犬の調子がイマイチだったので、今日は私一人で散歩です」という答え。

この人がビーグル犬を連れて散歩している姿を見かけるようになったのは、かれこれ30年以上前のこと。

こちらも犬連れなので、すれ違うときに声ぐらいかけそうなものだが、出会うようになってから、20年ぐらいはただその姿を見送るだけ。

というのも、この人の歩くスタイルは独特で、犬連れなのに両手を大きく振って、足取りはかなりの大股。わき目もふらず歩く速度はかなり速かった。

こんな風だったこともあって、ずっと声はかけずに長い年月が経過した。

ところが5年ほど前だったか、同じ川沿いの遊歩道ではあったが、いつもとは違う場所でばったり出会った。

思わず、「散歩のときに良く出会いますよね。今日はぜんぜん違うこんな場所でばったり出すね。」と声をかけた。

声をかけてみると、意外にも気さくな返答が帰ってきて、それ以来出会うと挨拶を交わすようになった。

その人が自分のほうから声をかけてきたのだ。そのときに会話。

「いや、いつも犬の散歩で出会う方ですよね」

「あっ、そうです、今日はワンちゃんを連れておられないんで気が付きませんでした」

「犬の調子がイマイチで、それで私一人で出かけてきました。

「そうなんですね。元気になって、またワンちゃんとも会えればいいです。」

「ずっと散歩を続けられているせいか、お若いですね。ちなみにおいくつですか。」

と年齢を聞いてきた。

「来年、私年男なんです。」

「えっそうなんですか、じゃあ辰年生まれ。実は私も辰年生まれなんです。」

「来年が六回目の年男。つまり72歳になります。」

「エーっ、お若く見える。いつも散歩されているからなんでしょうね。」

驚きの反応を見せたので、こちらも聞いてみた。

「そちらはおいくつなんですか」

「来年60歳になります。」

この返答に今度はこちらがビックリする番。なんと12歳も年齢差があったのだ。

まあ、確かに、歩くスピード、スタイル。顔のつやなどからして、そのぐらいの年齢でも不思議ではない。それにしても一回りも年齢差があるとは、ちょっとびっくり。

歩くときの姿勢やスピードには、もろに年齢がでる。

この人以外にも、川沿いの遊歩道を散歩コースにしている人は多い。高齢男性が健康維持のためと思われる散歩には毎回、何人かと出会う。

そこで気が付くのは、その姿勢。やや前かがみで、両足の膝が外側に開いている。そのためつま先が進行方向に向いておらず、いわゆるガニ股歩き。

この姿勢だと、膝が外側に曲がって突き出た感じになり、かなりの距離はなれた後方から見ても、膝が突き出た歩き方になっているのがわかる。

歩く姿勢を横から見た場合、背中の上部から首にかけて、前方に湾曲している。見るからに老人男性の歩き方という感じになる。

健康のために歩いているのだろうが、こうした姿勢で長時間歩くと、背中、腰、膝に負担がかかり、かえって体に悪いのではなかろうか。

膝が外側に開いてしまう原因はたぶん太ももの内側にある内転筋が弱くなっているからだろう。

男性の場合、この内転筋は中年の頃にはもう弱くなっている人がかなりいる。遊歩道以外の場所で見かける男性の歩き方を見ても、中年以降の男性のほとんどが膝が外側に開いていることが見て取れる。

加齢とともに、内転筋はどんどん弱ってきて、老年に達する頃には、もう立派な老人歩きのスタイルになるのだろう。

件の男性はまだまだ若々しい歩き方。彼が私に対して「お若いですね」と評した理由も私の歩くスタイルが若々しいものであるからかもしれない。と、ちょっと自慢してみる。