右か左か?3

観察者が実際に運動するわけではなく、その視点が移動しないような場合、つまり回転する物体の左回り、右回りの根拠はなんだろうか。
この問題に関し、ほとんどの人が正しい考え方を知らないのではないだろうか。
たとえば、回転するレコードを見て、右回りか左回りかを聞くと、右回りとほとんどの人が答えるだろう。
実際それで間違いはないのだが、では、なぜそれが右回りなのかと聞くと、これまたほとんどの人が、レコードの回転を上から見ると、時計の針と同じだからと答える。
これは答えになっていない。こういう答えをする人に、それではなぜ時計の針の動き方は右回りというのかと聞くと、理由にもならないような答えが返ってくることが多い。
小学生の頃、時計の針の動き方について習った時、担任の先生が時計の針は右回りだと私たちに教えた。私はなぜ右回りというのかと質問した。
その教師の答えは時計の文字盤の上半分に注目した場合、時計の針は左から右に動くからだと答えた。
私はさらに追及して、なぜ時計の文字盤の上半分だけに注目するのか。下半分に針がやってきた場合、針は右から左に動く。その説明だと、時計の文字盤の上半分と下半分では回り方が逆になるのではないかと質問した。
教師は答えに窮して、時計の針は右回りと決まっているの。といって、私の質問にまともに答えることはなかった。
要するにこの教師は、時計の針の動き方を右回りとするものの見方がどういうものか何も知らなかったに過ぎない。
物体の回転運動のように、観察者が、外からその物体の運動を見ることができる場合でも、自分がその回転運動しているもの、レコードの場合だと、その上に自分が乗っていて、顔は回転の進行方向に向けて動いている場合を想定する。
すると、これはトラック競技の走行とは逆周りの運動、つまり右へ右へとカープしていく運動をしているのと同じだから、レコードの回転は右回りなのだ。
このように、右回り、左回りの判断を、自分の目を実際に運動しているもののところに移して判定するのが日本式なのだ。
柱や壁に鉛直方向に架けられた時計の針の動きの場合でも、文字盤を水平にして、針の動きをxy平面上の運動と捉えれば、レコード盤の回り方と同じ右回りとなる。
ちなみに、日本では時計の針の動きを右回りとするが、英語では、先に述べたとおり、"go round clockwise, turn around clockwise"と表現し、"right"という単語は用いない。