日本人の英作文24

goとcomeの使い方を考えるにあたって、日本語の「行く」と「来る」との比較で考えることにする。ここで、前回の画像を再掲する。

イラストで「話し手」というのは、自分(I)のことで、「相手」というのは、対話の場合だと聞き手(you)のことになる。相手は対話相手と限らないのだが、そのことは今、考えないことにする。
(A)の図で、話し手(I)は点線で囲まれた中にいて、その場所から動かないことを意味している。
相手(you)がその場所に近づいてくることを日本語で「来る」という。その逆に相手(you)がその場所から去っていくことを「行く」と表現する。
イラストにもあるように、英語では、日本語で「来る」にあたるのが、"come"で、「行く」にあたるのが、"go"だから、(A)の場合のように自分が動かない場合には、日本語の「行く、来る」と"go, come"がうまく対応していて、日本人が使い方を間違えることはない。
ところが、(B)の場合のように、話し手(自分)が移動して、相手のいる方に向かっている時、日本語では、これを相手の方に「行く」と表現するのに対して、英語ではこれを"come"と表現する。
ここで、「行く、来る」と"go, come"の対応関係が崩れるため、日本人が使い方を間違えてしまう。
これから、話し相手が待っている場所に行くことを知らせようと、電話で、"I'm going to the place."といってしまうような間違いが典型的なものだ。
自分が移動せずに、相手が移動して、こちらに来る場合も、自分が移動して相手の方に向かう場合でも、二者の間は接近していくことになる。
英語で、対話の相手のところに行くことを"come"で表現するのは、この接近関係を表しているのがcomeだからだ。その逆に二者が離脱関係にある場合、"go"を使う。
日本語でも、(A)のように、自分が動かない場合の「行く」は「去り行く」の意味だし、「来る」は「やって来る」の意味だから、それぞれ離脱関係と接近関係を表している。
ところが、(B)の場合のように、自分が移動する場合、日本語では、「行く」が離脱関係を表さず、接近関係を表している。
事象から見た場合、論理が一貫しているのは英語の方で、日本語は「行く、来る」の表現に論理の一貫性がない。