外来語1

日本語では、もともとは外国語である言葉が実に多く使われている。日本語の応用力を象徴するものとして、肯定的に捉える向きも多いが、言葉の乱れとしてこれを嫌う人もいる。
ここでは、そういった外来語の氾濫そのものを捉えるのではなく、ちょっと別の角度からこれを取り上げてみたい。
別の角度というのは、日常的に使われる外来語がもともとの外国語とは、まったく別の意味で使われているものが多いという点だ。
外来語として使われる言葉の多くは英語が元になっている。サービスという言葉は英語のserviceから来たものだろうが、これまでよく使われてきたサービスの意味は、英語の本来の意味とはかけ離れたものだった。
今はあんまり使われなくなったが、「これ、サービスしときます」といって、店員が買い物客におまけの品を渡したりする。
私がよく行くスーパーの駐車場無料チケットには、「サービス券」と大きく書かれてある。
英語のserviceの意味は、企業や公共事業団体の顧客対応の業務のことだから、上記のような「サービス」は英語の意味からするとまったく、おかしな使い方になる。
最近、通信事業などで、事業会社がその業務を開始することを「サービス開始」と表現しているのは、英語本来の使い方にのっとったもので、ここにきてようやく、英語のserviceに近い、「サービス」の使い方が出てきたといえる。
言葉に限らず、料理などでも、日本人はその文化の中になにかを取り入れるとき、日本人向けに大幅な換骨奪胎を行う。
インド料理と思われているカレーライスは本場のカレーとは似ても似つかないものだし、キムチなども韓国人に日本人が作ったキムチを食べさせても、彼らはそれをキムチとは認定しない。
日本人向けのアレンジが本来の料理とはまったく違ったものにしてしまうからだ。
外来語においても、本来の外国語から意味が逸脱するのは、避けられないのだが、厄介なのは、原語からの意味の逸脱を日本人がそれと認識していない点だ。
認識していないから、日本語の中での使い方が、そのままその原語を使う時にも使えると勘違いする。
原語の意味から逸脱した使い方をされる外来語の中でも、際立って使用頻度の高い語が、「チャレンジ」だろう。
この言葉を読んだり、聞いたりしない日はないというぐらい、新聞でも、雑誌でも、テレビ番組でも、いたるところで使われる。
しかし、その使い方は、英語のchallengeとは、似ても似つかない。