Challenge for Change

表題は、ある有名家電メーカーの2015年のキャンペーンフレーズだ。
ネットの検索で、表題の言葉を引用符付きで検索するとそのメーカーのサイトがヒットする。
これまでに何度か、このブログで英語の"challenge"と日本語の「挑戦」とは違うものだと書いたが、日本で、この言葉の正しい意味が広がることは今後もないだろう。
さて、メーカーのサイトには日本語のものと海外向けに英語で書かれたものがあった。
日本向けのサイトで、英語の本来の意味と違った意味で使っていても、特に問題はなかろう。
ところが、このサイトでは同じ内容のものの英語版もあるから、それが問題となる。
"Challenge for Change"と、語呂もよく、前向きの上昇志向を示しているようで、キャンペーンフレーズにぴったりのように聞こえる。
"challenge"が名詞で使われている場合には、ある程度意味が通る。
しかし、このサイトのキャンペーンロゴに,"Sharp will challenge"と動詞の使い方をした文が添えてあり、英語として不適切なものになっている。
また、名詞としての使い方も、前向きあるいは上昇志向を表すフレーズとしては不適切だ。理由は後で述べる。
一体なんだって、こんなフレーズが、サイトのglobalページに載せられることになったのか。
ひとつ考えられるのは、元の日本語のページを訳したのが、日本人の翻訳家で,その翻訳家が,"challenge"の意味を正しく理解していないということ。
中学高校などの教育現場では,多分、今も「challenge=挑戦」と教えられるので、翻訳家になった後も,その知識が修正されないままの可能性は十分にある。
私は,ある学習グループに英語を教えていて、英語の"challenge"の意味を機会あるごとに説明するが、説明した当初は納得していても、しばらくすると,元の木阿弥。
何にも理解していないことが分かる。
なぜそうなるかというと、"challenge"の意味を表す適切な日本語が存在しないからだ。
英和辞典の"challenge"の項目には、「挑戦」が出ているから,日本語の「挑戦」の意味でしか,"challenge"が理解できない。いつまでたっても間違った知識のままだ。
もうひとつ考えられる理由は、日本でのキャンペーンで"Challenge for Change"が既定のものだったので、グローバルページだからといって翻訳家の意見で,これを変えることができなかったというもの。
実際、このキャンペーンフレーズは,日本語のページにも英語による表記で使われていて,広告代理店のコピーライターが考えたフレーズのように見える。
だとすると、翻訳家としては不承不承,このフレーズを使わざるを得ず,グローバルページにこのフレーズをそのまま載せて、日本人の英語音痴振りを世界に知らせる結果となったのかもしれない。
"Challenge for Change"をネット検索すると、かなりの数でヒットする。
英語圏で、使われたものに次のサイトがある。
http://fleetfeetmountpleasant.com/training/21-day-challenge-for-change
このサイトで使われている"challenge"の意味は、「試練」というような意味だ。
この意味だと、この家電メーカーに体質を改善する必要があり、そうするための課題を紹介しているように聞こえる。
家電メーカーが、これからもより良い物を求めていく姿勢を現すための、キャンペーンフレーズとしては相応しくないだろう。
英語をよく知りもしないのに、英語による表記を広告などに使う悪い癖は相変わらずのようだ。
ところで、日本から離れると、日本での特殊な使われ方の"challenge"のことが漸く、わかるようになるようで、下記のサイトが参考になる。
http://indianaky.blog45.fc2.com/blog-entry-409.html
ブログ主は,アメリカ在住の60代の男性。長いアメリカ生活から得た、英語に関する知識についても書いていて、私にも大いに参考になる。