日本人の英作文51

荒川静香のエッセーが終わって、続いての英作文の課題は、読売新聞夕刊に掲載されている「いやはや語辞典」というコラム。
このコラムは、毎回、違う筆者が現代風の言葉遣いに文句をつけるというもの。当然のように、筆者は全て中高年。同じ中高年の私としては、共感しきりのものが多い。
今回取り上げるのは、石毛直道という民族学者のエッセー。まず、その全文を引用する。

ウーン! 表現力の貧困さ
若いタレントが出演するテレビの食べ物番組を見ていて、気がついたことがある。どの番組でも、出来上がった料理を試食する時になると、定型化した表件が現れるのである。
料理を口にしたとたん、かならず「ウーン!」という感嘆詞を発するのである。
おいおい、一口だけで味がわかるのかよ?普通の人間なら、二口、三口、じっくり味わってから、感想をもらすはずなのに。お前さんは、そんなに鋭い舌の持ち主なのか?と、オジサンはボヤキたくなる。
男女を問わず、「ウーン!」という、うなり声を出すのが、試食のさいのエチケットとなっているようである。
酸いも甘いもかみわけた人生経験ゆたかな年配の男性が、「ウーン!」と感嘆するのは、それなりの説得力を持つ。しかし、若い女性タレントまでが、うなり声を出すのは、いかがなものか。
「ウーン!」のあとに、「バカウマ!」という人もおおい。「馬鹿馬」と動物を三頭ならべるのである。「ムッチャ、オイシイ!」という表現もよくなされる。
一流の料理人が作った料理のことである。いわれなくてもわかっている。
「オイシイ!」のひとことでかたづけるのではなしに、微妙な味加減や香り、食感などの美味しさを、もっと具体的に表現してもらいたいものだ。と、若者の表現力の貧困さに文句をつける、この頃である。
だが、それは、お前が若者の話についていけない年寄りになったからだ、いわれたら、わたしも「ウーン!」と、うなるほかなさそうだ。

荒川静香のエッセーでは、表現上の不正確さが随所に見られ、これが英訳のさいの問題点だった。
さて、上記エッセーはどうだろうか、
一読したところでは、さほど英訳上の問題はなさそうだが、実際にやってみるまではわからない。