この一年の多肉栽培を振り返って#1

2014年は、これまであまり栽培がうまくいかなかったり、栽培に失敗してばかりいた多肉に新しい栽培方法を試した年だった。
ことの始まりは、去年に、これも栽培がさっぱりうまくいかない帝玉を、それまでとは全く違う栽培法を試し、これがうまくいったことだ。
メセン類の栽培法として公式化されているものでは、帝玉は育たない。このことに気がついたことで、他のメセンも帝玉と同じような栽培法が良いのではと思ったことがきっかけ。
新しい栽培法はおおむね成功だったようだ。
まずはリトープス。メセン類の栽培法として公式化されている栽培法がもっとも適用される種類。
しかし、この公式はたぶん、大型ビニールハウスでの栽培には適切であっても、他の栽培条件ではうまく行かないと思われる。
それぞれの環境に合わせた栽培があるわけで、うちの場合は真夏でも、「遮光は30パーセントまで、潅水はそれぞれの品種の自生地の降水パターンにあわせて行う」というのが正解のようだ。
リトープスの自生地の降雨パターンには大きく分けて、夏降雨地域と冬降雨地域がある。
夏降雨地域にも二つあり、紫勲などが育つ南アフリカ東部の夏にそこそこの雨が降る地域と、花紋玉などの自生地の南アフリカ西部およびナミビアの高山地帯がある。
高山地域の降水は、夏に少し増えるが、一年を通して降水量はごくわずかだ。
また、冬降雨地域といっても、冬に降水量が目立って増えるというわけではなく、全くといっていいほど夏には降らないことに比べれば冬に雨がちょっとだけ降るというだけのことで、冬降雨地域という表現は正確ではない。
リトープスは冬型という認識に基づいて、自生地による降雨パターンの違いを考慮しない栽培法というのも、大量のリトープスを扱う栽培業者には適切であっても、せいぜい20種、40鉢程度の小規模栽培では、適切とは思われない。
業者の場合、栽培個体の歩留まりが90パーセントもあれば御の字だろうが、一品種二株程度の個人栽培では、それぞれの品種にあわせた栽培がぜひとも必要だ。
最初の画像は、南アフリカ東部の夏降雨地域の代表、紫勲とその系統のホルニーおよび弁天玉、それから日輪玉の寄せうえ。
夏も直射日光がんがん当てまくり、潅水もやめることなく、一週に一度ぐらい、たっぷり与えて夏を越した。
確か、側面がもっと土の上に出るように植えつけたはずなのだが、いつも間にか、頂面だけが顔を出している。
こういう現象を「もぐる」と表現するようだが、別にリトープスが土にもぐったわけではない。強い日照を浴び続けて、本体が縦方向に縮んだだけだ。

二枚目の画像はトップレッド。ナミビアの高山地帯が自生地で、夏に他の季節より降雨量が増えるが、それもごくわずか。
夏も午前中は遮光せず、直射日光に当て、午後からは半日陰。潅水は、朝早くに表土が湿るほどの量を霧吹きで与えるという栽培法で、夏を越した。
夏の間中、皺だらけで、冬のこの時期になって、やっと皺が取れた。
三枚目の画像は繭型玉。夏には全く雨が降らない南アフリカの大西洋に近い砂漠地帯が自生地。
しかしこの地域、三日に一度、明け方に濃い霧が発生し、これがこの地域に自生する植物の水分補給に一役買っているようだ。
したがって、冬型だからといって、普通の潅水、つまり鉢底から水が、流れ出すような潅水は、この地域に一年に一度だけ、一週間ほど続く雨の時期だけに限って行い、他の時期は、霧吹きを使って表土だけを湿らすというのがいいように思う。
この株は実際、そのような栽培法でこの一年を過ごした。当然のことながら、夏の間は皺だらけだった。
どの種類にも共通なのは、夏の潅水を完全にやめ、いわゆる休眠させるという栽培はしなかったこと。
休眠させると、根が干上がってしまうから、秋に植え替えをしなければならなくなる。
しかし、ビニールハウス栽培ではない場合、急激に温度が下がる秋にうまく根が出ず、枯れたり、根が出ても、脱皮が遅くなったりする。
そして、それが今度は新しい葉の生育期間を短くしてまう。これが悪循環となって、いわゆる作落ちのパターンを作ってしまう。