かくも異なるものか#3

悩める14歳女子と同じ悩みを同じような年頃に抱いたことのあるものとして、回答に納得できないというか、物足りなさというか、そういうものを感じるのは、「その負のエネルギーを行動に変えたら凄まじいエネルギーを発揮するはず」という点。
それはそのとおりだと私も思うが、その「行動に変える」はどのような行動のことなのか、全く述べていない。
行動の種類、対象、さらに具体的な方法を述べない限り、それは何も答えていないのに等しい。
「私、不幸なんです」という相談に対して「幸せになれば?」。「勉強が苦手なんです」に対して、「勉強すれば?」という回答と同じで何の助言にもなりはしない。
相談相手がある程度の年齢に達した大人ならば、抽象的回答でいいのかもしれないが、相手は14歳だ。経験も知識も不足している。
そんな相談者に抽象的回答でいいはずがない。
これは、相談コーナーの紙面の関係とか、あまり具体的方法では、差し障りがあるという大人の都合か、そういったことがあるのかもしれないが、回答者自身が同じような悩みを相談者と同じぐらいの深刻さで経験したことがなく、それゆえ、その対処法も真剣に考えたことがないからだと思う。
私の場合、具体的な悩みは顔の造作だけでなく、身長が低いということもあった。
どちらも個人的努力ではどうにもなりそうもない。14歳女子と同じく、鏡で自分の顔と対面するのがいやで、鏡のある場所に来ても、正面から鏡に写った自分の顔を見なくなっていた。
身長のほうは「身長が伸びる体操」なるものが某出版社から発売された折に購入。真剣に取り組んだが、身長が伸びる時期を過ぎてしまっていたのか、何の効果もなし。
次に思いついたのが、肉体改造。
家に父親が以前に購入して放置してあったダンベルやバーバルに目が入り、「うん、これだ」誰もが目を見張る筋肉マンになろうと決意した。
本格的にやるには、正しい方法、適切な器具が必要というので、早速、ボディビルという月刊誌を発行している出版社から何冊も本を購入。夏休みの間にバイトもして、それで得た金を全部、ボディビル用のベンチ、ダンベル、腹筋台などの購入に当てた。
購入したボディビル関係の本のなかには、当時のボディビルダーたちの憧れの的、ボディビル界のスーパースターたちの写真集もあった。
そうしたスーパースターたちの中で、特に私の目を惹いたのが、フランク・ゼーンというビルダー。
この名前を聞いてピンと来る人は、同じ頃にボディピルをしていたか、少なくとも興味を持った人に違いない。
彼の身長はアメリカ人にしてはかなり低い175cm。しかしその肉体は生けるギリシャ彫刻とまで言われるほど、いや、私には、ギリシャ彫刻以上の肉体美の極致に見えた。
いつまで見ていても、飽きないほどの魅力あるボディ。その日から私の目標はフランク・ゼーンになった。
この記事を書くに当たって、懐かしい名前を思い出したので、ついでにネットで画像検索をかけてみた。
すると驚くほどの数の画像がヒットした。私と同じように、彼の肉体に魅了された人は、今でもたくさんいたのだ。彼は、いまやボディビル界の伝説となっていた。
画像は画像検索でヒットしたうちの二つ。
うーん、今見ても惚れ惚れする。
その当時から筋肉お化けのようなビルダーはいくらでもいた。
しかし美しくない。そんなビルダーたちとはまるで違う見事なバランス。
こんなのが、何気にプールサイドやピーチにいたら、目を向けないやつはおらんだろう。