日本人の英作文2015-3

「ツバメのつんちゃん」の英作文、2回目。
課題箇所と訳文はつぎのとおり。

「つばめはね、あたしといっしょ。南の国からきたんだよ」
サリーちゃんは大きな目をくりっと動かしていいました。
「つばめの赤ちゃんは、ここで大きくなったら、南の国にかえるんだ」
訳文1
Sally said to Mari with her round eyes moved, "Swallow's babies grow here, then go to the south island."
訳文2
One day, Sally-chan was rolling her eyes amusedly and said to Mari-chan, "You know these swallows came from south countries, and so did I. After baby swallows grow up here, they will fly south."

日本語で「〜して…しました」という表現は英語にするのが結構難しい。
それは、元の日本語が「〜」の部分の動作と「…」の部分の動作が「1. 並行して行われたのか,2. 時間的に連続して行われた」のか不明だからだ。
訳文1も訳文2も1. の場合だとして訳したものだろう。
だとすると、「〜しながら…する」という場合に使う,付帯状況を表す分詞構文を使うのが良い。
訳文1は、この部分を"said to Mari with her round eyes moved"と"move"を受動態にしている。
これは、"with her round eyes being moved"の意味でそうしたものだが、これだと「目が(何かによって)動かされている状態で」という意味になり、大変奇妙な状況を言っていることになる。
また、"moved"を"moving"にすると、今度は「目が(自分の意思で)動いている状態で」という意味になり,付帯状況の分詞構文といっても,"with 〜ing"の形はここでは使えない。
訳文2は過去進行形の文に単純過去形の文を続けた。これは時制的にしっくり来ない気がする。"amusedly"という単語は辞書にはなく,使うなら"amusingly"だろう。
ちなみに"amused"と"amusing" の関系は、 "excited"と"exciting"や、"bored"と"boring" の関係に等しい。
二つの関連した形容詞を混同して使用する日本人が多いので注意。
余談だが、テレビのインタビュー番組で,女優のDが司会のKに語った話で、ある外国人男性とバーのカウンターで同席になった折、ひとしきり会話が弾んだ後、男性が黙り込んだので,"Are you boring?"と聞いたそうだ。
もちろん、Dは「私といるのが退屈?」のつもりで上記の英語を言ったのだが、この英語だと、「あなたって退屈な人間なの」と、その場の気まずい雰囲気を男性の所為にする言い方になっている。
テレビなどで、"I'm exciting."などと訳の分からない英語を使う日本人が出てくることがたまにある。英語がろくに分からないのなら、いっそうのこと、英語など使うべきではない。
訳文1では、原文の「つばめはね、あたしといっしょ。南の国からきたんだよ」の部分を完全無視。
その後の「つばめの赤ちゃんは、ここで大きく…」の部分は、つばめの一般的性質を現すなら現在形にしておく。
日本語はその点も不明確で,目の前のつばめのことかつばめ全般の事を言っているのか、表現に区別がない。
その点、英語はその事を"swallow"を定冠詞付きにするのか、無冠詞複数にするのかによって区別する。
また原文の最期のところで、「南の国にかえる」とあるが、会話をしている場所から去っていく場合,英語では"come"ではなく、訳例1のように"go"を使うのが正しい。
ここで、南の国に帰るのは,成長した雛だけで行くのではないことも明白で、この点も日本語は表現が不十分。実際、訳文2の言い方だと動詞を"go"とするのは正しくても、主語が"baby swallows"だと、親鳥をこの地に置いて、自分たちだけで南の国に去るように聞こえる。
南の国へは親鳥が連れて行くというのが常識。これを日本語では改めて表現しない。
情報そのものが不正確だったり、情報提供が不十分な場合が、日本語ではほとんんどで、それをそのまま英語にしたのでは,英語として最悪、意味不明。少なくとも、不正確な英語になってしまうことを忘れがち。
訳例
"The swallows came from the south. So did I." said Sally-chan, turning her big eyes toward me.
"After the baby swallows grow big enough here, the parents will take them to a southern land."